人の命の はかなさは

瘡かきは瘡かきをうとみ、めくらはめくらをうとむ。
分限者は分限者をねたみ、長者は長者をねたむ。
乞食は乞食といがみ、百姓は百姓をにくみ、女郎は女郎をそねみ、似た者が似た者をうらみ、肉親が肉親をうらむ。
それだけのことだけど、それだけに恨みは深い。
(作中歌より抜粋)

…というわけで、観てきましたよ。
井上ひさし作/いのうえひでのり演出『天保十二年のシェイクスピア』。
久々の新感線系です。しかも、上川隆也古田新太が共演するというわけで、観ないわけにはいかないっつーか。何ていうか。
でも、正確には、この公演は新感線ではないのです。作が井上ひさしだし、企画監修が鴻上尚史だし。
一緒に行ったのはSky Theaterの面子。ヨモ、ヒエダ、ナナヱ、ヲーキ。

ちなみに、この脚本、以前『ZIPANGU! SHAKESPEARE』というタイトルで、'98ENBUゼミいのうえひでのりクラスが上演しているんです。ヒエダ嬢は、そのときの出演者。
まあ、その公演自体は僕は観てないのですけどね。ヨモは観にいったはず。
まだ、「ヒエダさん」という存在を僕らが知らなかった頃のお話。

ただの表現である脚本が言論であるはずもなく、だから、台詞の中にはいろいろな用語が飛び交う。
僕が仕事では使いたくても使えない単語たちが平気で台詞の中に入り、歌の中に入り込み、客席を飛び交う。
登場人物たちは、それぞれが、人を騙し、媚び諂い、まぐわい、裏切り、陥れ、疑い、自滅し、姦通し、殺し、屍姦し、惑わし、また殺し、そして殺されていく。
羨ましいと思う。
佐渡の三世次は吊るし上げられ、突き殺され、そして真っ赤な血しぶきが飛び散り、百姓共を濡らす。
羨ましいと思う。