Azrael

皆さんは身近な人に死なれたこと、ありますか?
5年前のクリスマスの早朝、僕の後輩が事故で亡くなりました。
バイクで走っていたところ、対抗車線にいた居眠り運転の車が車線を乗り越えた結果、衝突したそうです。
芝居が好きなヤツでした。
大学の演劇サークルに所属する一方で、地元の友人たちと劇団をやっていました。
裏方志望のヤツでしたが、Sky Theater PROJECTの原型である四方田直樹の脚本作品に出演したこともありました。
亡くなったのはSky Theater PROJECTの旗揚げ直前でした。
サークルでの実験公演を終えたばかりで、ヤツにも何か手伝ってもらおうと思っていた矢先の事故でした。
気さくと言うよりは気難しい、悪く言えば生意気なヤツでした。
バーチャファイター2が好きなヤツでした。
豪血寺一族2が好きなヤツでした。
Zガンダムが好きなヤツでした。
バーチャロンではベルグドルを使っていました。
聞いた話に寄れば、カルピスと猫が好きなヤツだったらしいです。
そいつが亡くなって初めて、そいつの家がクリスチャンだったことを知りました。
何故、クリスマスの早朝に亡くなったのか、とか意味のないことを考えました。
エノクが神に取られたエピソードを思い出しましたが、それも意味のないことです。
葬儀の日、生まれて初めて賛美歌を歌いました。
その後、その賛美歌は、親戚や弟の結婚式でも歌いました。

事故を引き起こした人物の名を僕は知りません。聞いたけど忘れました。
僕はその人を憎んでいます。
人を憎むというネガティブな情動が、これほどまでに人を突き動かすということを生まれて初めて知りました。
憎しみは何も生み出さないという言葉は嘘っぱちです。

翌年のクリスマス、僕らは芝居を打ちました。
僕らなりの弔い方という表現をしたら、怒られるでしょうか?

たまにヤツがすでにいないことを忘れて「あ、これ、あいつに見せたら喜ぶぞ」と考えてから、ヤツがいないことを思い出し、愕然としたりします。
警察署の前の交通事故者数の死亡の欄が0でない日、膝から崩れ落ちそうになることもあります。

でも、僕は生きています。
これからも多分、生きていくでしょう。

うちの劇団の主宰が書いたある脚本の括りに「昔そばにいて、今は記憶の中にしかいない人達に」とあります。
その文章を見て、僕は不覚にも泣きました。
こればっかりはどうしようもありません。