髑髏城の七人〜アオドクロ

「女は別嬪、男たちはみんな馬鹿。こんな街、そうザラにはないぜ」

『髑髏城の七人〜アカドクロ』に続くゲキ×シネ第2弾。

昨年の10月に日生劇場で上演されたInouekabuki Shochiku-mix『髑髏城の七人〜アオドクロ』を撮影したものだ。

すでに昨年秋にアカドクロのゲキ×シネを観ているので、映画館(「劇場」と書くと語弊があるので「映画館」と記述)で舞台の映像を観るということの是非については特に言及しない。

ただ、前回よりはすんなりと芝居に集中して観ることができた。

映画なのに休憩ありの二幕、っていうのも最初から受け入れてたしね。

前にも書いたが『髑髏城の七人』は97年秋に池袋サンシャイン劇場で観て以来、お気に入りの演目。

アオドクロでの一番の注目は、玉ころがしの捨之介を市川染五郎が演じるということだった。

『SUSANOH〜魔性の剣』のパンフによれば、染五郎が『髑髏城の七人』を観たことが近年の流れの契機になっているようなので、念願叶って、というところだろうか?

全体的にキャストは一般ナイズされていて、演劇に詳しくない人でもわかる錚々たる顔ぶれに。

以下、キャストの違いによる印象をつらつらと。

染五郎演じる捨之介は、徹頭徹尾健やかな感じでまとめられており、以前のような「女好きで気風のいい兄ちゃん」という雰囲気ではなくなっていた。しかし、『阿修羅城の瞳』の出門を見る限り、染五郎にもそういう感じの役は似合うわけで、これは演出の方向性が変わった、と観るのが良いだろう。

今回のアオドクロでは無界屋蘭兵衛は男。しかも、池内博之が演じている。天魔王が染五郎ということもあって、例のシーンはさらに耽美となっていく。ゾクゾクした。っていうか、池内博之を見直した。佳い男サね、彼は。

「抜かずの兵庫」に相当する役は、「こぶしの忠馬」と名を変え、佐藤アツヒロが演じていた。基本的な役回りは一緒だが、役者のジャンルが変われば、雰囲気もガラリと変わる。猪突猛進さは同じだが、ある種の「若さ」があるキャラクタに生まれ変わっていて、これも好感だった。

♪夢はフリーダム、フリーダム……

97年版では無界屋蘭兵衛を演じていた粟根まことは、関八州荒武者隊の「裏切り渡京」という役になっていた。これは「裏切り三五」に相当する役なのだが、97年版蘭兵衛の面影もちらほら見えて、嬉しかった。

ちなみに、調べてみたら90年の初演版では「裏切り渡京」という名でやはり粟根まことが演じていたらしい。原点回帰?

鈴木杏演じる沙霧は、アカドクロの延長上にある若いイメージだった。捨之介がああいう爽やかイメージなら、沙霧もこのくらい若い印象の方が似合っている気がした。

みっちょん沙霧とはイメージも違うが。

極楽太夫は97年版と同様、高田聖子。アカドクロでは蘭兵衛が女性だったこともあり、正直、太夫という役自体が食われていたのだが、アオドクロの太夫はもう全開。トバしまくりな感じだった。

そして忘れてはならないのが、忠馬の兄の仁平を演じた村木仁。要するに、兵庫の兄の磯平に相当する役どころなのだが、ガリガリの磯平に比べて、仁平は……。

彼の体格とそれに似合わない機敏なアクション。忠馬とのコンビネーションも相まって、抱腹絶倒だった。

ただ、メインではないものの個人的に気に入っている役どころである服部半蔵が逆木圭一郎になってしまったのはちょっとしょんぼりだった。スマートな半蔵が好きだったのだが、惜しいかな川原正嗣は関東髑髏党に格上げ(?)に……。

キャストに関しては以上。以下、全体のこと。

97年版をベースに、アカドクロは歌やダンスといった要素をオミットして、ストレートプレイとしてのグレードをアップさせた感じだったが、アオドクロはドラマを強化しつつ歌とダンスを加えた感じだった。

さらに、関八州荒武者隊にも見せ場があり、それが長じてこぶしの忠馬のディテールをアップさせる結果にもつながっているなど、内容的にも深みが増していたように思う。

その一方で、捨之介や蘭兵衛、狸穴二郎衛門の正体が、ハナからバレバレな演出になっていた(これは映像のカット割のせいでそう感じたのかもしれないが)のはどうかと思った。

まあ、一般向けに親切設計にしたという点ではこれはこれでいいのかな?

ドラマも強化して、さらに歌も踊りもってんで、長くならないはずはない。そんなわけで、欲張りすぎのアオドクロは200分、休憩も入れれば210分。『天保十二年のシェイクスピア』並みの超大作。

でも、その長さを感じさせないのがすごいところだった。

第一幕が終わった時点で、金欠の僕に勢い余って1997年版のDVDを購入する決心をつけさせるくらい勢いのある芝居&良い映像だった。

今回の丸の内東映での上映は3/25までだったが、4/2からまた上映を再開するし、大阪、札幌、新潟、横浜、広島、福岡でも上映される(名古屋はすでに終了)そうなので、まだ観てない人は是非、映画館に脚を運んで欲しいものだ。

娯楽に飢えてる人は特に、ね。

『髑髏城の七人〜アオドクロ』(2005)

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:市川染五郎鈴木杏池内博之/高田聖子/三宅弘城粟根まこと/川原和久/タイソン大屋/中野英樹山中崇/安田栄徳/杉山圭一/高杉亘/小村裕次郎/川原正嗣/前田悟/村上よし子/山本カナコ/柴田健児/小寺利光/島田裕樹/小椋太郎/蝦名孝一/葛貫なおこ/田畑亜弥/武田みゆき/伊藤美帆/嶌村緒里江/野澤紗耶/村木仁/逆木圭一郎/横山一敏/藤家剛/竹内康博/中川素州/加藤学/矢部敬三/三住敦洋/佐治康志/ラサール石井佐藤アツヒロ

映像STAFF

プロデューサ:金沢尚信

監督:前嶋輝

撮影監督:大嶋博樹

髑髏城の七人〜アオドクロ公式サイト