髑髏城の七人1997
便宜上、ミドドクロとでも言えばいいのか?(笑)
ゲキ×シネ『髑髏城の七人〜アオドクロ』の出来が良かったために、ついつい劇場で購入してしまったDVD。すでに7年半前の作品のDVD化である。
常々、ビデオが欲しいと思っていたのだが、昨年DVD版が出たので、買える機会を待っていた、というのも一応はある。
このいのうえ歌舞伎『髑髏城の七人』を観たのは忘れもしない1997年10月11日(いや、正確な日付は覚えてなかったけど……記録をとってるというのは良いことだ)。
個人サイトの方に97年当時に書いたレビュー(多分、書いたのは1997年12月)があるので以下に抜粋。
髑髏城の七人……興奮している(苦笑)。常々、新感線の芝居を観にいきたいと思っていたのだが、ことごとくそのチャンスを逃していたので、一念発起して当日券で観にいくことにしたのだが、行って大正解。最初から最後まで、だれることなく飽きることなく観ることができた。あまりに面白くて、打ちのめされた気分で家に帰るハメになった。
初・新感線がこの作品で良かったと思う。いのうえ歌舞伎、侮れない。
なんていうか、古田新太が死ぬほどカッコ良すぎ。その一言につきる。もう、惚れたとしか言いようがない。
1997年たけうちエンタテイメント大賞。
古田新太を観たのは、サードステージの再演版『トランス』(1996/2)、野田地図の再演版『キル』(1997/7)に引き続き3度目。『キル』はしょんぼりなアレだったが、『トランス』が良かったので古田自体はすでに気に入っていたわけだったのだが、こんなに色気があって、カッコいい人だとは思ってなかった(今でもTVの古田新太しか知らない人はそうかもしれないが)から衝撃が大きかったのかも知れない。
丁度、惑星ピスタチオがぶいぶい言わせてた頃だったので、ノリでヒートアップしていくお芝居には耐性があったつもりだったのだが、甘かった……。
当時のレビューにあるとおり、打ちのめされた気分で帰ったことをよく覚えている。
コメンタリィでも言っていたが、1997年が7年前だなんて信じられない……。
さて、肝心の映像を改めて観たわけだが……。
やっぱり良いね。最初から映画館で上映することを前提に撮影されたアカドクロやアオドクロと比べてしまうのは酷なので、それはしないが……それでもビデオ販売することを前提に撮られてはいるので、鑑賞に耐えうる映像だと思う。
それでも、「ああ、このシーンは引きで観たかった」というシーンはいくつかあったが。
97年版の捨之介は、やはり自分の中では捨之介の決定版だ。「女は嘘をつくから可愛い」と嘯いたり、沙霧を抱きしめたまま腰を動かしたり、これぞ捨之介って感じ。
『SUSANOH〜魔性の剣』での「それはそれ、これはこれ」と断言するイズモと合わせ技で、古田新太の真骨頂といえる。
そしてぺてんの沙霧。みっちょん。お魚咥えた芳本美代子。「大人」ではないのだが、完全に「子供!」な印象になってしまっているアカやアオの沙霧と違って、女を感じさせる。艶っぽいという意味ではないけどね。
『髑髏城の七人』を捨之介と沙霧の話、と捉えるなら97年版ですでに完成の域に達しており、これを超えることはないんじゃないか、と改めて感じた。
舞台装置は記憶していたよりシンプルだった。
この素舞台のそっけなさが、無界の里に入った途端、唐突に色味を帯びてくる、という演出だったのか……。
人と人との境がなくなる無界の里。無界の里は無可有の郷。春を売らない娼たち。
やはり蘭兵衛の作った世界はユートピアだったのだ。当時感じたことをいろいろと思い出した……気がする。
97年版は、中座、サンシャイン劇場、愛知厚生年金会館、大野城まどかぴあで上演されたようだが、映像はサンシャイン劇場のもの。だから、余計に懐かしかった。ひょっとしたら観た回なのか? さすがにそこまではわからなかったが。
下手にどん付けされたアレは花道というべきなんだろうかね?
個人的に好きだった狸穴二郎衛門がいきなり沙霧を切り捨てるシーンが久々に観られたので満足……。
小ネタの数々は、97年当時を思い出すいい材料となった。「ねるじぇら」のブルマ編(by野村佑香)は、よく知ってる商店街で撮影されたんだよなぁ……。
あと、橋本じゅんの独り語り。これは完全に忘れてた。あったあった。
DVDの特典としては、いのうえひでのり、古田新太、高田聖子らによるコメンタリィモードと、90年初演版のホームビデオ映像(ダイジェスト)が収録されている。
コメンタリィはアカドクロ上演前、04年の頭に録ったものだろうか? 7年前に思いを馳せつつ雑談、みたいなノリで楽しかった。
古田新太はしきりに当時の自分の演技を「浅い」と言っていたが、それに感動した自分は何なのだろう?
あと、ラスト、沙霧が家康に首を献上するシーン。演出家的には疑問だったそうで、それがアカやアオでの「最後のぺてん」につながったのだそうだ。
でも、言わせて貰えば、その前のシーンであそこまで盛り上がったのだから、97年版のような終り方の方がスマートで良かったと今でも思っている。その疑問は脳内補完していたから、アカとアオのアレは蛇足だと思ったわけよ……。
初演版の特典映像は、まさに「ホームビデオ!」って感じ。デジタルではないので画像はかなりアレ。でも、いろんな角度から撮ってある。別々の日に撮影した素材を組み合わせたのかな?
これを観て発見したことは、初演版の蘭兵衛は女(鳳ルミ)だったのだねぇ、ということかな?
沙霧役の高田聖子は……別人?
この頃はまだテリー・ボガードがいたのだねぇ。ってか、餓狼伝説はまだ先か。
そんなわけで、値段以上に堪能しつつ、ついでに自分の過去の傷(芝居とは一切関係ない)などを思い出したりもしたDVDだった。
「殿、そんなことを書くと、また痛くない腹を探られることになりますぞ」
「すまぬ、半蔵……」
GEKIDAN☆SHINKSANSEN AUTUMN TOUR 1997
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太/芳本美代子/粟根まこと/高田聖子/橋本じゅん/逆木圭一郎/河野まさと/インディ高橋/フランキー仲村/吉田メタル/右近健一/田尻茂一/前田悟/大林勝/村上よし子/山本カナコ/タイソン大屋/はだ一朗/船橋裕司/武田浩二/山口貴史/林裕隆/村上よし子/山本カナコ/杉本恵美/江本敏子/保地有紀子/中谷さとみ/平川雅子/中村成美/真藤洋/磯野慎吾/川原正嗣/こぐれ修
映像STAFF
プロデューサ:新井達己
監督:板垣恭一