電車男
村上航氏が出演するということで、出向先を大急ぎで飛び出して、後半30分をなんとか観ることができた第1話(あとで人に録画してもらったものを観たけどね)の放映から三ヶ月。
TVスペシャルも終わってしばらく経ったことだし、ここらでまとめてみるとするか……。
去年の『ラストプレゼント〜娘と生きる最後の夏〜』以来、久々にちゃんと見たドラマだ。
『電車男』が何なのかは今更説明する必要もないだろうけど、その特殊性から、放映されることを強烈に望まれていたドラマだったように思う。
基本ストーリィは単純明快なのだが、主人公が匿名ネットワークコミュニティとのコミュニケーションを交えながら、実生活にフィードバックしていくというのが、新しかった(すでに過去形)。
現在、ネットコミュニティに足を突っ込んで生活しているという人間が、今の日本にどれくらいの割合でいるかは知らないが、実数にしてみれば結構な数だと思われる。
が、その視点に立脚したドラマは今まで殆どといっていいほどなかった……。
そういう意味では、このドラマが平均20%以上の視聴率(最終回にいたっては、関東で25.5% - ビデオリサーチ調べ)を叩き出したということ自体に意義があるし、意味もある。
また、このドラマが放映される以前と現在では、微妙に世の中のネットコミュニティに対するイメージが変わったのではないだろうか?
なんて話はさておき……。
「実際、ドラマ版はどうだったのよ?」というと、『電車男』の名を借りた何か、だったとしか言いようがない。
設定と導入を踏襲しつつも、全11話もたせるためか、いろいろとトラブルが起きる、起こさなくてはならない。
それが見ていて大変、クドかった。
ドラマ版「電車男」の名を冠する山田(伊藤淳史)は、オタクだからとか、気弱だから、とかそういう形容からはずれるほど、小ズルくて、挙動不審で、矮小で、すぐに恍惚に入ってしまう変態キャラクタ(笑)。
ドラマ版「エルメス」こと青山(伊東美咲)は、過去に恋愛で苦渋を味わったせいか、はたまた、家庭環境のせいか、恋愛に対して尻込みしている。
彼女が何か事件があったときに、「他の人がなんと言おうと山田を信用する」という姿勢を一度たりとも見せたことがない(笑)。そんなキャラクタになってしまっていた。
そういう前提がありつつ、トラブル発生⇒エルメス誤解⇒電車男ネットで相談⇒解決、みたいな感じでストーリィが進むので「エルメスは電車男のこと好きじゃないだろ、基本的に」「エルメスは高嶺の花のまま」という印象になってしまう。
「信用したいのに」「好意はもってるのに」という葛藤すら、ない(笑)。
にも拘らず、ところどころで「原作」に引き戻されて、その台詞を言ったりするので、ちぐはぐな印象が残った。
元々は「エルメスが積極的に間を詰めようとしている」「電車男の報告から、むしろ向こうが電車に惚れている、ということが窺い知れる」「それでも尻込みしている電車男の背中を押す」というパターンが『電車男』の肝だと思っていたので、なんかね全体的に印象が逆だった。
残念なことに、ドラマ版からは「エルメスいい娘やなぁ」という印象は芽生えなかった。
あのエルメスじゃ大人のキス、リードできんでしょ。
でも、いいのです。
ドラマ版は、途中、暗中模索な感はあったものの、最終的にはコメディとして製作側が割り切ったので。
とても面白かった。
特に「陣釜さん」こと白石美帆の飛ばしっぷりが良くて、毎週、楽しく観ることができた。
最終的には山田と陣釜がくっつけばいいのに、と思いながら見ていたくらいだ。
マウントとったときは「そのままやっちゃえ」って思ったしな……。
白石美帆が台頭したせいで、割を食ったのは佐藤江梨子。
お邪魔キャラとして登場したはずが、単なるいい人として落ち着いてしまった感あり。むしろ、逆に無理にでも青山と山田をくっつけようとする人間として配置した方が、うまく機能したかもしれないなぁ、とぼんやり思ってみたり。
『電車男』の中で数少ない、原作にもキチっと登場する「友人さん」のポジションだったのにね……。
まあ、全体的に青山サイドの人間は、殆ど割りを食っている感じはあったけど……。
おいしかったのは、山田サイドの人間ばかりだ。
ネットの住人にしても、山田のプライベートの知り合いたちにしても、いい味出ていたように思う(軍事ヲタ役の村上さんも、川本氏役の菅原さんもおいしかったですよね)。
ここまでキャラが立ってしまうと、もはや『電車男』ではない別のドラマが出来上がってしまう。
それでも『電車男』として終わらせなければいけないので、最終回は大した盛り上がりもなく、ダラダラと終わってしまったのに対し、『もう一つ最終回スペシャル』の方は、もう完全にオリジナルストーリィとして成り立ってしまっていた。
こういうのがやれるほどにキャラクタが立っていたのだがら、コメディとして大成功だったんじゃないかと思う。
そのスペシャルの視聴率がいまいちふるわなかった(関東で15.6%)のは残念だけど。
最終回より、ずっと面白かったなぁ……。
MVPは、映画版の電車男役で本作の「リーマン」役だった山田孝之と、「陣釜さん」の白石美帆、かな?
『電車男』(2005/7/7〜10/6: 全11話+SP)
脚本:武藤将吾/徳永友一
演出:武内英樹/西浦正記/小林和宏
プロデューサ: 若松央樹/川西琢
音楽:Face 2 fAKE
出演:伊東美咲/伊藤淳史/白石美帆/佐藤江梨子/須藤理彩/速水もこみち/劇団ひとり/菅原永二/佐藤二朗/前川泰之/堀北真希/小出早織/岸部シロー/戸田恵子/豊原功補/秋吉久美子/山下真司/海老原敬介/小栗旬/小嶌天天/掛田誠/我修院達也/加瀬尊朗/桜井千寿/田村たがめ/土井よしお/豊永利行/中島陽子/なすび/波岡一喜/温水洋一/野水伊織/本田誠人/松尾諭/水野智則/村上航/矢柴俊博/山崎樹範/山中崇/弓田真好杜/六角精児/菊間千乃/塚地武雅/鄭龍進/葛山信吾/皆藤愛子/伊藤隆大/梶原雄太/少路勇介/堀内健/泉谷しげる/山田孝之/マーフィー岡田/けーすけ/城咲仁/小木博明/坂本あきら/隈部洋平/大倉孝ニ/エスパー伊東/横田剛基/佐野剛基/川原井史子
SP出演:岩佐真悠子/井澤健/ソニン/布川敏和/小川直也
主題歌:『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』サンボマスター
原作:中野独人
⇒フジテレビ『電車男』公式サイト ⇒裏ページ 追伸:陣釜さんスペシャルやらないかなぁ……。
⇒フジテレビ『電車男』公式サイト ⇒裏ページ 追伸:陣釜さんスペシャルやらないかなぁ……。