五右衛門ロックとグレンラガン

ちょっと前の話になるがヨモ君から借りていた
TVアニメ『天元突破グレンラガン』のDVDボックスを
全話、鑑賞し終えた。
天元突破グレンラガン』は、劇団☆新感線の座付き作家である
中島かずき氏がシリーズ構成およびメイン脚本を努める作品だったので、
「いのうえ歌舞伎」が好きな身としては、いつか観ようと思っていた作品だった。
一気に観ないよう、1日2話まで、という縛りでちびちび観た、という感じだ。

結果から言えば、第二部と第三部はとても面白かった。
全員の拠り所とも言うべき人物を失ってから動き出す物語と、その後日談。
特に第三部の「突如として現れた理解不能な敵」の演出には、「ほぇ〜」と思った。
ムガンの無機質さは、恐怖の対象たりえると思うのですよ。
まあ第四部は個人的にはオマケかな。
そこで生まれた恐怖心と、実際のアンチスパイラルとのギャップを僕の中で
埋められなかったのが、原因ですが。

あ、宇宙に海っていうのは、なんかレッドホーク連合艦隊を彷彿させたので、
ちょっとわくわくしましたけど。
かなりマクロな世界観での戦いなのに、量子論なんてミクロの世界の
ルールに支配されているのは、何かの皮肉なのかな……?

さてさて、それを受けて、というわけじゃありませんが、
つい先日、現在公開中のゲキ×シネ『五右衛門ロック』を観に、
新宿バルト9まで行ってきちゃいました。
19時35分からの映画ですが、終わったのが23時10分て!

職場の人に言ったら『GOEMON』を観てきたと勘違いされましたが、
紀里谷監督のあれとは特に関係はないですw
あ、でも江口洋介は出てますよ。
石川五右衛門を追う京都所司代盗賊目付の役で。

五右衛門ロック』は昨年の夏に、今は亡き新宿コマなどで上演した新感線☆RXの舞台。
「RX」だから、『SHIROH』系のミュージカルかと思いきや、
古田新太演ずる石川五右衛門が活躍する娯楽活劇でした。
コマだもんね。芸能だよね。

まずお芝居の感想。
結論から言えば、面白かったです。

でも、第一幕は退屈でした。
いきなりガツンと本題を始めるのではなく、五右衛門が捕まって釜茹でにされる
ところから始まり、彼がいかにして生き延びたか、というのをまず語ってから、
その後の彼の冒険が始まるまでが長くて、この話が何の話なのかよくわからないため、
しばらく我慢してなきゃいけない。
で、彼が南の海に出て、「石川五右衛門」という題材からは
まったく想像もつかないような冒険物語の登場人物たちが出てきて、
そこが「物語の舞台」だと認識させるための解説を、第一幕まるまるかけて、解説する感じ。

で、準備を済ませて休憩明けの第二幕で全部持ってく!
伏線もミスリードもすべて回収して、新感線的な盛り上がりにつながっていく。
徐々に明るみに出る意外な真実、どこか憎めない悪役、そして本当の黒幕、
その国の物語の終焉を見届けた五右衛門たちは、新たな天地へ。
悪くない。すごく面白かった。

でもな。

グレンラガン』もそうでした。序盤。
後につながる、後の方まで根気良く観続けていれば、
必要だったと気付くプロセス。そのための布石。

いいんですよ? いいんだけど、でも……
これって『週刊少年ジャンプ』だと打ち切られるパターンでしょ。
テレビだとCMでチャンネル変えられちゃうパターンともいうし、
DVDだと再生を切られちゃうかもしれない。

だから、もうちょっと前半をコンパクトにするか、
後半につながる何かを入れるかしてほしかった。

物語の構造自体は『もののけ姫』と同じなわけですよ。
キャラは『ルパン三世』でしたけどね。
事件の当事者ではないアシタカヒコの出奔から始まって、
彼が物語の舞台にたどり着き、そこの顛末を見届ける。
『野獣郎』パターンともいえます。
まあ、五右衛門はまったくの第三者ではなく、
彼自身の因縁もあったわけですけどね。

映画や演劇なら、基本的に観客は最後まで席についてるから
問題ないかも知れないけど、もうちょっと序盤を退屈させない
工夫があると良かったなぁ。

次にゲキ×シネとしての感想。
今までで観たゲキ×シネの中では一番、駄目だったかも。
なんかアップのカットを多用しすぎのように思いました。
引きのカットを使うのが上手くない、というか。
おかげで、コマの舞台がかなり狭く見えましたよ。
「あれ〜、ゲキ×シネってこんなもんだったかな〜?」と思い、
昨日、『アオドクロ』のDVDを観直してみたら、引きとアップの
バランスが上手に成り立っていたので、そこはやっぱり、編集のせいでしょう。
舞台で観た人には問題ないかもしれません。
でも、ゲキ×シネで初めて『五右衛門ロック』を観た人のことは
あまり考えられていない構成だったと思います。
音響も臨場感という意味では、以前の作品ほどではなかったですし。

というわけで、今までのゲキ×シネの感想と比べて
不満も結構書いてしまいましたが、基本的にはオススメです。
今回はスカッとする内容ですしね。

新感線の舞台を観てみたいけど、高くて、という方や、
チケット取れなくて、という方、
それにアニメ『大江戸ロケット』や『天元突破グレンラガン』などで
劇団☆新感線に(ひいては演劇に)興味を持った方。
まだ上映してると思うので、是非是非、観にいってみてください。

そして、気に入ったなら生の舞台も観てみてくださいね。

かくいう僕も生新感線は『吉原御免状』以来、観てないので、
そろそろ生で観にいきたいところ。
次の新感線の頃、忙しいのか? 行けるといいなぁ。
Inouekabuki-Shochiku-mix『蛮幽鬼』、10月かぁ。忙しいだろうなぁ。その頃。