原発40基分?

風力発電で原発40基分の発電可能 環境省試算asahi.com 2011/4/22 5:00) すごい記事が出てきました。 タイトルにある「原発40基」って相当の量です。 実現できるなら夢のような数字ですが、普通の神経なら目を疑います。 僕も仰天しました。風力発電は全発電量の0.3%(2008年度)って話でしたし、僕の認識では、原発1基の発電量って、あの風車の風力発電機500基分くらいの発電量がある、と思っていたからです。 記事を読んでみて、まずタイトルが試算そのものと比べて誇大表現だとわかりました。 記事の中で風力でまかなえるとしている発電量は、2,400万kw〜1億4,000万kwで、原発の7〜40基分(正確には、6.78基〜39.53基分かな?)だ、とあるんですね。 7基と40基じゃ、全然違うわけです。 7基じゃ、発電所1、2箇所程度ですが、40基なら、全国で55基ある炉の7割以上を賄えてしまうわけです 試算とはいえ、範囲が広すぎる……。 ちなみに、記事によれば原発1基の定格出力は100万kwと仮定してます。 静岡出身の僕にとって一番身近な原発浜岡原発ですが、浜岡の定格出力はそれぞれ、3号機が110万kw、4号機が113万7,000kw、5号機が138万kwですから、100万kwというのは、ちょっと少ないですがまあ、普通かな。 一方、浜岡と同じ御前崎に11基存在する御前崎風力発電所の風車は、1基につき2,000kwの定格出力。 横浜にあるハマウィングも1,980kwだそうですから、大体、2,000kwくらいっていうのが最近の風力発電機の相場なのかな。 10年ほど前に某トロのゲームソフトの撮影時に城ヶ島から見えた宮川公園の風車の定格出力が400kw程度でしたから、発達してると言えば発達してるのかも知れませんが(単純に大きさの問題かもしれないけど)、それでも2,000kw。 普通に考えると、やっぱり風力発電の風車は、500基くらいないと、原発1基分に到達しそうもないです。 500基って……。 先日、九州に行った際、車で移動しながら阿蘇にしはらウインドファーム風力発電機のある風景を眺めていましたが、たった10基の風車に結構な面積を使用してましたよ。 先程は出力だけで単純比較しましたが、記事の試算では、風力発電稼働率を24%、原子力発電の稼働率を85%で試算している、とありました。 この稼働率ってヤツを適用してしまうと、原発1基の発電量をまかなうのに件の2,000kwクラスの風力発電機が1,770基、必要になってしまいます。 そして、原発40基分の電力をまかなうためには、70,800基の風力発電機が必要となります。 一体、どのくらいの用地面積が必要なのか、見当もつきません。風車のブレードの直径は約80mだそうですから、100m四方に1基くらいが妥当でしょうか? あまり詰め詰めに配置しても意味なさそうですが。 記事には「理論上可能な最大導入量から、土地利用や技術上の制約を差し引き、さらに事業として採算性を確保できることを条件に加えた」……とあるけど、本当かなぁ? 三重の青山高原ウインドファームの増設事業の資料によれば、40基の風力発電機を増設するのに約56ha必要としてありますので、仮に1基につき1.4ha必要として単純に計算すると、原発1基分の電力をまかなうのに必要な敷地面積は2,478ha、つまりは24.78平方キロメートル。 品川区の面積が22.72平方キロメートルなので、品川区をまるまる風車で埋めても原発1基分に足りないことになっちゃいます。 記事でいうところの原発40基分の電力をまかなうなら、必要な敷地は99,120ha、991.2平方キロメートル。 東京23区の面積が621.98平方キロメートルだから、23区の1.6倍くらいの面積をまるまる風車で埋め尽くすことになりますね。 また、単純に風力発電機を海岸線沿いに100mおきに横一列に並べるなら、原発1基分で177km、40基分なら7,080kmの距離が必要になってくるわけで。 ……こ、この試算、大丈夫? 記事には何の資料も示されてないので、記事だけ見ても「そうなの?」「本当に!?」と心配になってしまいます。 今は脱原発の声が大きいですが、風力発電の反対運動は前からあって、生態系への影響とか、低周波公害とかいろいろ言われてるみたいです。 風力は決して夢のエネルギィではないようですね。