ボクと魔王と都市伝説
ネットの海をさまよっていると、時折、妙な都市伝説を目にすることがある。
その中でも個人的に一際目をひくものに、
「RPG『ボクと魔王』のシナリオライタはすでに鬼籍に入っているので続編は絶望的である」
というものがある。
『ボクと魔王』を立ち上げると、「planning: Tadato Kawano Hiroshi Yamamoto」という表記の次に、「scenario: Masahiko Yokomi」と表示される。
僕の知る限り『ボクと魔王』でシナリオライタとして脚本を執筆していた横弥真彦くんは存命である。
割と古くから付き合いのあるライタさんで、その縁で恋愛ADV『セパレイトブルー』(2003年発売)のシナリオを手伝ってもらったりした。
その後も氏は、ネットゲームなどの制作に携わっているし、個人活動として非電源系のゲームを作ったりもしている。
先日も、うちの子供の出産祝いに来てくれたばかりだ。
その際、赤子に手話を教えるという「ベビーサイン」の本をプレゼントしてくれたが、まだ実践はしていない……。
っと、話題がそれた。閑話休題。
少なくとも『ボクと魔王』のメインライタは生きている。
では、なぜ、そのような都市伝説が実しやかに囁かれているのか。
元々、『ボクと魔王』自体が知る人ぞ知る作品であることや、開発スタッフ陣の名が大っぴらに告知されていないこと、開発元のZENER WORKSさんが現在はオンラインゲームやモバイルゲーム中心の開発になっているようで元々、続編が出そうな気配がないことなど、噂が広まりそうな要因は、いろいろあげられる。
こういったサイトなどで「シナリオのメインライターが亡くなってしまった為残念ながら」などと実しやかに語られているのも、噂を広める要因になっているようだ。
が、元々の噂の出所はおそらくここではないかと思われる。
『ポポロクロイス物語』を手掛ける田森庸介氏の2002年8月9日の日記だ。
要約すると、「「ボクと魔王」のシナリオに参加しているシナリオライタの根本晃氏が亡くなった」とのことである。
『ボクと魔王』のエンディングを確認すると、確かに「screenplay(脚本の意)」の欄の「Masahiko Yokomi(ZENER WORKS inc.)」の下に「Akira Nemoto」の名がある。
サブライタの方は、2002年に実際に亡くなっているのだ(ご冥福をお祈りいたします)。
横弥氏に確認をとってみたところ、根本氏は街の会話などの一部を担当されていた様子。
また、実際にシナリオを執筆したのは横弥氏だが、お話の基本形を作ったのはエンディングに「scenario cooperation(シナリオ協力)」としてクレジットされている野間口修二氏という方のようだ。
実際、田森氏の日記の内容に嘘はなく、また作品のスタッフリストが出回ってなかったことから、噂が噂を呼び、「ボクと魔王の脚本家が死んだ」という都市伝説になって、流布してしまったのではないだろうか?
死んだことにされてしまっている横弥くんがちょっと気の毒ではあるが……。
今後、『ボクと魔王』の続編または続編に相当するものが作られるかどうかは、さすがに知る由もないが、作品の監督(ディレクタ)さんやメインライタ、そして基本のプロットを作った方は存命である。
脚本家やディレクタ、プランナなど、ゲームのスタッフにまで注目してゲームを買う人は、実はそれほど多くはない。
この機会に、彼らの今後の作品に注目してみるのもいいのではないだろうか?
……とりあえず、PSP版とか出ませんかね?