キカイダーREBOOT

先日、といってもちょっと前になってしまうが、割かし楽しみにしていた映画『キカイダーREBOOT』を観てきた。

ここ最近、石森ヒーローたちが何人か、仮面ライダー映画の中でリファインされて登場してたけど、やはり独立した作品として観たかったので、今回のリメイクは嬉しい報せだった。

監督は、TOEI HERO NEXT『PIECE〜記憶の欠片〜』下山天監督。脚本の下山健人氏は、最近見た中では『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ』が面白かった。

キカイダーは数少ない単体ヒーロー映画化に耐えうる作品だと思うし、同監督の『PIECE〜記憶の欠片〜』は面白かったので、それなりに期待しての鑑賞。

面白かったか、と問われれば、まあ面白かったは面白かったんだけど(少なくとも1995年の『人造人間ハカイダー』よりは好き)、楽しかったか、と聞かれたら考え込んでしまう。そんな感じの映画だった。

この作品のパンフレットを見ると、出演者や関係者の中でも1960年代後半生まれの人のコメントが光っている気がする。

64年生まれの鶴見辰吾さん、66年生まれの長嶋一茂さん、下山監督。技術指導の古田貴之博士も68年の生まれだ。皆、キカイダーのリアルタイム世代で思い入れも深いのだろう。

僕は1971年12月の生まれだから、『人造人間キカイダー』が放映開始した頃は、まだ0歳。残念ながら、リアルタイム世代ではない。ソノシートの「ゴーゴー・キカイダー」を聴きながら育ちはしたものの、ライダー同様、キカイダーは専ら再放送での視聴だった。

再放送でよく覚えているのは後番組の『キカイダー01』の方で、イチローよりも「01に出てくるジロー」に胸をときめかしていた(逆にマジンガーに乗らない『グレンダイザー』の兜甲児はいやだった)ように思う。

そういう意味では、今作のマリの登場は嬉しかったし、作品の良いアクセントになっていたように思う。

この作品を語るにあたって引き合いに出されるのは、2004年の『ULTRAMAN』、2005年の『仮面ライダーTHE FIRST』、2011年の『電人ザボーガー』、2012年の『宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE』くらいだろうか?

初代へのオマージュを含めつつも完全新作にしてしまった『ULTRAMAN』や、あえてリブートせず続編にして二代目に襲名させた『ギャバン』よりは、『THE FIRST』や『ザボーガー』の方が比較対象になりそうだ。

内容に関しては、全体的に平坦で、また、どうしてこういう展開になったのかという部分の説得力が妙に弱い気がした。

どことなく大人な印象があった光明寺ミツコという存在を現代の女の子風にアレンジしつつ、しかも現代的な学生の友人関係の中で仲良くしつつも馴染めずにいる娘とした上で、突然現れる日常を逸脱した存在であるジローに疑似恋愛をしてしまうという図式(弟のマモル的には父性の獲得)は、個人的には嫌いではない。でも、物語がミツコ視点の物語として徹底しているわけじゃないので、余計なアレンジに見えた人もいるかも知れない。

とある組織の陰謀に巻き込まれ逃亡の身となった光明寺姉弟を護衛するという任務を遂行するキカイダー、という図式での「三人」の逃避行の旅も悪くなかったのだが、序盤は武闘派に見えた対抗勢力も、元々は政府側の組織なので、実は目的さえ達成できればコトを穏便に済ませたいようで、結局はターゲットを保護し解放する、という「じゃあ、彼らは何のために逃げてたの? キカイダーは何のために守ってたの?」的な展開になってしまうので(敵も一枚岩ではないので、現実としてはありうるわけだが)、もやもやする。

「少年の身体に隠されたモノが追跡者に奪われたらどう拙いのか?」が明瞭でないせいで、単に少年たちの身の安全だけに観客の興味が(ジローの目的も)行ってしまうからなのだが、この辺りは見せ方次第でもうちょっと何とかなったような気がする。

最終的には、無理矢理最後のボス的に配置されたハカイダーとの対戦になるわけだが、ハカイダーと戦わなくてはならない意味も意義も(ないわけじゃないんだけど、一本の映画としては)見出せない。

それに、スタッフ側が「キカイダーは弱い」という認識を持って作っているようで、キカイダーが全然活躍してくれない。ちゃんと戦って活躍したのは、最初のヘリポートでのグレイサイキング戦くらいだ(決め台詞「機械的に行こうか」もここだけだったし)。その戦闘だって必然性がわからず(ターゲットの子供を一人、連れ去るのにあそこまでする必要はないので、逆にキカイダーをおびき出すための行為かと思ったら、特にそんなことはなかったw)、しかも長く感じたので、全体的にもうちょい観てる側が楽しめるような構成にしてくれたら良かったのにな、とは思わずにいられなかった。

すでに『仮面ライダー鎧武』のクロスオーバ回で登場していたので初見ではないのだが、キカイダーのデザインは、全体的にかなりシャープになっていた。元々、キカイダーの顔の素朴な印象が好きだった人は多いと思うので、これは賛否分かれそう。

デザインの村枝氏は、眼窩の窪みはつり目風にしたが、目そのもののタレ目は死守した的なことをパンフのインタビューで述べていたが、どうなんだろ? あまり効果的ではなかったかもしれない。

個人的には、もっと、大きめの目でがっつりタレ目の方が好みだったかも。S.I.C.キカイダーの顔は総じていい感じだったんだけどな。メタリックなテラテラした色調もそんなに好きじゃない。でも、これがガシガシ動けば人気でそう、とは思った。まあ、作中ではそんなに活躍しなかったのが残念ではある。

TVシリーズのジロー役だった伴大介氏が前野究治郎(前の旧ジロー)という洒落た役名で出演するということ自体は、事前にインタビューなどを読んで知っていたので、もうちょっと物語にガッツリ絡むのかと思ったら、そうでもなかったので残念だった。登場の尺的には、このくらいが丁度よい感じだったのかも知れないが、せっかく前野先生の居場所を皆で目指していたのに雑木林で邂逅してお終い、というのがあっけなかった。

ただ、こういう風に旧作の主演俳優がリメイク作に快く出演していること自体は大変微笑ましく感じた。勝手なイメージだが、藤岡弘、氏は、(『PROJECT G4』や『レッツゴー仮面ライダー』、先日の『仮面ライダー大戦』で現行の主演ライダーにバトンを渡してはいるものの)仮面ライダー=本郷猛を別の若手が演じる作品(『THE FIRST』系だけじゃなくて、そのうち現れるかも知れない初代ライダーのリブート作品)には出てくれなさそうな印象がある。

アンドロイドたちによる機械的なアクションは好みで、ジローとマリの組手などは楽しかった。高橋メアリージュンさんの無機質な演技も好みだったので、続編があるなら、是非、ビジンダー(唯一、S.I.C.で所持しているのがビジンダーなのです)に変身してもらいたい(そのためのマリという役名だと思うので)。

というか続編を意識した内容だった気がするのだが、続編はあるのだろうか? この作品が評価されなければ、続編が製作されない、というのは勘弁して欲しい。是非ともシリーズ化して、最終的には須賀健太くん演じるイナズマンと共演して欲しい。

ただ、できあがった映画からは「できれば続編を作りたいから続編への含みを持たせるけど、作られないかもしれないから一応、第一作に盛り込めるだけ盛り込んどこう」というニオイが感じられて、中途半端に感じたのは事実。

続編を作るつもりなら作るつもりで第一作目は「第一作目として成立するもの」をキチンと作る or 続編がないなら最初から想定せずに「全部乗せのテンコ盛り作品」を作る。最終的に続編が作られるか否かは別にして、そういう姿勢で良かったんじゃないだろうか? そういう意味では、余すところなく全部乗せした『電人ザボーガー』は痛快だった。

この映画は、「やっぱ『キカイダー』にはハカイダーを出しとかなきゃダメだよね」っていう感じがちょっと違和感だったように思う。ハカイダーってキカイダーのライバルではあるし、存在としては大きいんだけど、全編を通した敵でもなければ最終的なボスでもないので、ヒーロー映画の第一作目のヴィランとしては不似合いな気がする。後の復活も考えて、無理くりギルハカイダーを前倒しに登場させた感もあるし。

正直な話、今回はヒーローであるジロー=キカイダー(と光明寺姉弟)の物語であって欲しかったので、ハカイダーは必要なかったんじゃないか、と観終わった後、考えてしまった。ドラマ部分の大筋はあれでいいかも知れないが、ヒーローものの流れ的には「序盤で倒したグレイサイキングが自我を獲得。暴走して街を破壊し、それを倒す話」程度のもので逆に全然良かった気がする。で、次回作を『キカイダーハカイダー』にすれば、二作目としても話題になったんじゃないだろうか。

あと、個人的には折角リブートしたのだから、エンディングに「ゴーゴー・キカイダー」を流してほしくはなかったし、TVシリーズの画像も出して欲しくはなかった。もちろん、「ゴーゴー・キカイダー」は大好きだけどね。この辺が、この映画の中途半端さに繋がったのかな、と思わなくもない。逆に「全部乗せ」の『ザボーガー』ではマッチした演出に思えたから、結局、作品のコンセプトの話なんだと思うけど。

原作コミックのテーマがどうとか、旧作のTVシリーズがどうとか、そういう比較をするのは意味がないとは思うけど、独立した一本のヒーロー映画として、もっと満足度の高い作品になってたらな、と思ったっていうのが正直なところだろうか。

決して、つまらない作品ではないんだけどね。期待が高すぎた、というわけでもないと思うので。

続編、期待してます。

そして、須賀くんのイナズマンとの共演を是非w

映画『キカイダーREBOOT』公式サイト