バイクに乗らないライダー、車に乗るライダー

『仮面ライダー鎧武』が先日、最終回を迎え、10月5日から『仮面ライダードライブ』が始まる。鎧武の感想はまたの機会に書くことにして、今回はドライブのことを少々。

特撮各誌に新作ドライブ関係のインタビューが載り始め、そのいくつかを読んでみたのだが、主人公・泊進ノ介役の俳優さんが「竹内涼真」という名前なので、頁のいたるところに竹内、竹内と書いてあって、ちょっと目が泳いでしまった。

鎧武の時は主人公名が紘汰(作中で「こうた」とか「こうたさん」とか呼ばれる)だったせいで、耳が慣れるまではこそばゆい思いをしたものだが(昔、『勇者エクスカイザー』はそれに耐えきれずに視聴を断念した記憶があるw)、視覚にもカクテルパーティ効果のようなものがあるのだろうか?

それはさておき、気になることがある。

新作の仮面ライダードライブは、バイクではなく「トライドロン」と呼ばれる自動車に乗るライダーである。

それに対して公式でも「仮面ライダーの歴史が変わる!」というアナウンスまでしている。

でも、長年仮面ライダーシリーズを視聴してきた人なら、バイクに乗らない仮面ライダーや、車に乗る仮面ライダーが何ら珍しいことではないことは、知っている。

東映テレビ朝日も石森プロもそのことは、重々承知しているはずだ。

にもかかわらず、そのような告知が公然と行われる。

これがちょっと面白いな〜、と思ってしまった。

実際、ドライブが正式に告知された際、ネット上でも「バイクに乗らないライダーなんてライダーじゃない」とか「そんなの仮面ライダーじゃなくて、仮面ドライバーだろ」的なツッコミが蔓延した。同時に、「刑事で仮面ライダー」であることに対するツッコミも散見された。

ライダーファンの「いやいや、車に乗るライダーなんて珍しくも何ともないから」とか「刑事・警官のライダーなんてたくさんいるから」っていうフォローよりも、一般のそういうツッコミの方が多かったような気がする。

仮面ライダーがバイクに乗らないこと」と「仮面ライダーが車に乗ること」は項目としては別だが、どちらもそんなに珍しいことではない。

実際問題、rideやride onという言葉は、馬やバイクなどのまたがるものに乗ることだけを差すわけではない(仮面ライダー電王は電車にrideするライダーである)し、今回の企画には海外ドラマ『ナイトライダー』の影響も感じられる(あくまで企画側の発想で、脚本等の作劇上の影響はないらしいが)ので仮面ライダーじゃなくて仮面ドライバーなんじゃないかってツッコミは野暮だ。マイケル・ナイトが搭乗するKITT(ナイト2000)は車だもんね。でも、ナイトドライバーではない。「Knight Rider」は現代の騎士なのだ。それは仮面ライダーも同様で、彼らはバイクに乗ろうが車に乗ろうが、ライダーであって運転手ではない。

まあ、「主演ライダー」に限って言えば、バイクに乗らずメインマシンが車のみであることは確かに珍しい。サブライダーにはバイクを持ってないライダーも多い(車で移動するサブライダーや、自分自身がバイクに変形するライダーなどもいる)のだが、

・「トライドロン」の元ネタであろう「ライドロン」は仮面ライダーBLACK RXの愛車の名称であるが、もちろん彼にはバイク「アクロバッター」がある。

・バイクにも乗れず、車に乗ってもエンストさせてしまっていたメカ音痴の仮面ライダー響鬼さんも、当初はパートナの運転する車「不知火」の助手席専門だったが、途中で免許を取得し、バイク「凱火」を支給されている。

・電車にrideすると先述した電王も、電車の動力部分は「マシンデンバード」というバイクである。

……などなど、結局、主演ライダーはなんだかんだでバイクに搭乗している。

刑事にしても同様で、警察官や元警察官という属性を持ったサブライダーは結構多い。が、こちらも主演ライダーに限って言えば警察に協力することがあっても、本人がそういった公的組織の一員であった作品はない(私的組織の一員であることはある)。

だから、そういう意味では、今回の売り文句もあながち「嘘ではない」。

でも、やはり車に乗るライダーやバイクに乗らないライダー、警官ライダーというのは、珍しくないのでもにょるのだ。

つまり、この売り文句は、普段あまりライダーを観てない人に向けられたものだとわかる。

似たようなケースでこんなこともあった。

仮面ライダー鎧武』の第26話で、アームズ換装中の鎧武を、背後から龍玄が狙撃したのだ。

この時も「仮面ライダーの変身(実際は換装中だが)中は攻撃されない、という不文律を破った。新しい」みたいな感想が数多く出た。

多くはライダーを普段見ているわけではない人たちの、伝聞による感想だと思うのだが、仮面ライダーシリーズをはじめとする特撮ヒーロー番組において、変身中の攻撃は、すでに不文律でも何でもない。

変身中の攻撃といえば、最初に思い出すのは『仮面ノリダー』の「♪かーいわれまきまき」という「ミツカン酢」のCMをパロッた長ったらしい変身モーション中、ジョッカーの皆さんにタコ殴りにされ続ける、というものだが、本家のライダーシリーズでも変身中に襲われることは珍しくない(最初の平成ライダーであるクウガでも、すでに三話目の時点で変身中に攻撃されたりしている)。

その対策も作中で結構、講じられていた。

仮面ライダー剣』では、ライダーたちが変身する際、ベルトから畳状の光の壁「オリハルコンエレメント」が射出され、その光の壁をくぐることによって変身が完了する。その光の壁はかなり強く(完全無敵ではないが)、当たった怪人は弾き飛ばされてしまうので、変身中の攻撃はほぼ無効になってしまう。

仮面ライダー響鬼』では、「鬼」と呼ばれるライダーたちの変身方法は三通りあって、太鼓の鬼は変身時に身体が炎に、管の鬼は竜巻に、弦の鬼は雷に包まれるので、そこを攻撃しようとした魔化魍たちはダメージを受けてしまう描写があった。

作品にもよるが、昨今のヒーローはライダーに限らず、基本的に変身モーション中の攻撃というのは、別に「禁忌」でも「お約束」でも何でもないし、変身中の攻撃は敵側にとってもリスクを伴うケースも多い。

ちょっと面白いのが、キョウリュウジャーだ。変身の最中、彼らはサンバのリズムに乗り、踊りながら変身する(自然と身体が動いてしまうらしい)。一見、隙だらけに見えるのだが、変身中の攻撃は、軽やかなダンスステップで躱わされてしまうのだ(あの変身はカッコ良かった)。

件の鎧武だって、宙から降ってくるアームズが攻撃を防いだり、アームズ装着時には光の果汁のようなエフェクトが飛び散り、攻撃しようとしたインベスを吹き飛ばしたりしていた。

鎧武も変身中やアームズ換装中に攻撃されることは多々あったけど、基本的には無敵だったのだ。あのシーンはその隙をうまくついたシーンではあるが、不文律を破ったシーンではない(そもそもあのシーン、紘汰はすでに変身していて、アームズこそ換装中でつけてないものの、身体はライダーの素体に包まれていたわけだし)。

それでも、やはり「変身中に攻撃した」ことが話題になってしまう。

つまり、実際どうかということは問題ではないのだ。

「車に乗る仮面ライダーは新しい」とか「普通は変身中に攻撃しない」というイメージの方が世の中に浸透しているということが大事で、それを逆手に取った告知をした方がいい、ということになる。

まあ、40年近い歴史を誇るスーパー戦隊が30年前(1984年)から女性2人体制を採用し始めても「昔の戦隊はヒロインが1人だったけど、最近の戦隊は女性が複数の場合もある」とか言われたり(最近っていつだ?)、カレーが好きなイエローが過去に二人しかいなくても「イエローと言えばカレー」みたいに言われたりすることもあるので、定着してしまったイメージってのがいかに拭えないものかはわかるんだけどね。

まあ、主演ライダーとしては初の「専用バイクに最後まで乗らないライダー」&主演ライダーとしては初の「刑事ライダー」の『仮面ライダードライブ』に期待! ということで。

楽しみだな。

追伸

……というか『仮面ライダー大戦』の感想を書いた段階では、翌年のライダーが刑事ものになるなんて想像すらしてなかったんですが、そこで希望してた「警察に関係するライダーや主要人物が総登場する警察映画」がより一層見たくなってきましたw

一条刑事と氷川さんをメインゲストに据えて、特状課が国安0課や超常現象捜査課、G3(G5?)ユニットなどと共演する春の大戦映画、あってもいいですよね。

そこに宇宙警察地球署や銀河連邦警察が絡んだりして。警視総監はもちろんあの人(あ、でもキョウリュウジャーと世界観を同じくする『俺たち賞金稼ぎ団』ではあの人だったか)で。