GODZILLAと雀路羅と日本

ようやく、昨年公開されたギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』のBDをレンタルにて鑑賞しました。

世間的にはレジェンダリー版とか呼ばれてるあれね。

ゴジラというコンテンツには、それほど思い入れがない僕ではありますが、1980年『ドラえもん のび太の恐竜』の同時上映だった『モスラ対ゴジラ』(再編集版)を劇場のスクリーンで観たのはよく覚えてます。

多分、ゴジラ初鑑賞だったとは思うんですが、幼少期に初めて見たゴジラが負けるという、そんな原初体験です。

その後、1984年の『ゴジラ』もTV放映か何かで観ていると思いますし、『ゴジラVSビオランテ』は、『ドラゴン拳』の小林たつよしさんが描いたコミカライズを別冊コロコロで読んだ記憶があります。

僕のゴジラ体験はその程度なんですよね。

ミニラとかが登場する子供の味方的な昭和ゴジラは、TV放映で観たことあったかも知れませんが、印象になく、多分、怪獣大辞典的な書籍での知識しかなかったと思われます。

幼少時は、「流星人間ゾーン図鑑」を後生大事に読んでた僕なので、「正義のゴジラ」の印象もないではないのですが、映像で観たのは、やはり人間の脅威としてのゴジラなんですよね。

最近になって、2001年の『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』を観たんですよね。

父の故郷である妙高からバラゴンが蘇り、母の故郷である清水を壊滅させたゴジラと、家族旅行でよく行った箱根の大涌谷で戦う……っていう、妙に個人的なノスタルジィを誘う映画です。

最終的には、清水みなと祭りの「港かっぽれ」を作った宇崎竜童氏がゴジラと対峙するので、平成ガメラ金子修介監督がメガホンを取った、ということとは全く関係なく、俺得な映画でしたw

主演はデカゴールドこと新山千春さんだし、一条さんこと葛山信吾さんや、今回の『GODZILLA』で芹沢博士を演じた渡辺謙さんの奥さんである南果歩さんも出演しているという、ミレニアムシリーズの中でも要チェックな作品だったようです。

1998年のローランド・エメリッヒ監督による『GODZILLA』は、当時、付き合っていた方と有楽町の劇場で公開初日に観ました。

ゴジラファンからは評判の悪い作品だったようですが、ゴジラにそれほど思い入れのない僕たちにとっては、単純な娯楽作品として楽しめたように記憶しています。

98年版『GODZILLA』にしても『大怪獣総攻撃』にしても、やはりゴジラはヒーローではなく脅威として描かれていたので、やはり僕にとってのゴジラは「人類の脅威」という印象で固まっているようですね(あとは、劇場で観たといえば、山崎貴監督の『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の冒頭に出てくるゴジラかな。あれも初代ゴジラ=脅威でしたね)。

今回の『GODZILLA』はどうなんだといえば、人類の脅威とも、悪い怪獣を倒すヒーローとも、どちらとも取れるようないいとこ取りの存在であるように描かれていました。

平成ガメラと対比する向きもあるようですが、あれはどちらかと言えば伝奇ものに分類されると思っているので、比較はそんなに意味がないような気もします。

作品はいたってシンプルで、父と子の関係を中軸に据えて、アーロン・テイラー=ジョンソン演じるフォード大尉の行く先々で起こる怪獣被害を淡々と描いていきます。

キック・アス』では、冴えないデイヴくんを演じていた彼ですが、今回は言われなければわからないほど、筋骨隆々なハンサムボーイでしたね。

ちなみに、彼はこの夏公開予定の『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』にクイックシルバー役での出演が決定しています。

フォード大尉の妻役だったエリザベス・オルセンもスカーレットウィッチ役で出演するので、今回のゴジラアベンジャーズの前哨戦と捉えることもできそうです。

つーか、ウルトロン楽しみです。『エージェント・オブ・シールド』Season 1も非常に面白かったので、早く夏が来ないかな、と思ってるところであります。

さらに言うと、『X-MEN:デイズ・オブ・フューチャーパスト』でクイックシルバー役を演じたエヴァン・ピーターズも、デイヴの親友役で『キック・アス』に出演してるので、ふたつの次元のクイックシルバーが『キック・アス』の世界(一応、マーベルユニバースのひとつなのかな?)で邂逅しているってことになってて、なんかもうわけがわかりませんよね。

っと、話が大きくそれました。閑話休題

フォード大尉と父の関係、フォード大尉と息子の関係、芹沢博士と父への想い、フォードが道すがら保護した少年との関係。

あくまで怪獣映画なので、それほど深く掘り下げられるわけではなく、ドラマ自体は全体的にあっさり目でちょいと退屈なのですが、そんな風に親子関係を描きつつ、フォードは、因縁の怪獣ムートーの雄と雌とが大洋を越えて邂逅し、やっとの思いで産んだ卵群を焼き払います。

いいですね。こういう対比は好きです。

ゴジラ自体は、ひたすらムートーを追い、彼らを滅ぼすための存在としか描かれていないので、映画のタイトルが『GODZILLA』であることに、いささか疑問を禁じ得なかったりするのですが、まあ、このシリーズでの人類とゴジラとの邂逅を描く最初の話、という意味では良いのかも知れません。

この作品を見て、一番、引っ掛かったのは、実は冒頭に登場する日本の都市「JANJIRA」です。ジャンジラ市。

海沿いで富士山の麓っぽいので、沼津辺りか、原発は浜岡か、とか思いながら観ちゃったんですけど、まあ、富士山はあくまで日本のアイコンで、福島をイメージしてるのかも知れませんね。設定的には「雀路羅市」と書くのだそうです。

この「ジャンジラ」という名前、いくら漢字表記をこじつけても、日本人から見れば、到底、日本らしくない名前です。

日本の地名は音読みより訓読みの方がそれっぽいしね。「東南アジアに実在する地名だ」とか言われたら、多分、信じてしまうことでしょう。

でも、多分、本国のスタッフ的には、日本っぽい名前として設定したんだろうな、と思ったわけです。

ジャンジラのJANは、JAPANをもじったものでしょうかね?

JIRAは、「GODZILLA」の日本読み「GOJIRA」を連想させます(実際、作中でも芹沢博士だけは「GOJIRA」と発音してますし)。

「ジャパン+ゴジラでジャンジラ、すげー日本っぽい名前!」って発想なのかも知れません。

発想的にはサンフランソーキョーと大差はないんですが、いまいち嚥下しづらいですよね。仮に日本の作品で、「メリケン・サック」って名前のアメリカ人が登場したら……と考えると、まあ、わからないでもないかな、くらいには思いますけど。

ゴジラは日本のものではありますが、海外の人は、日本人が思う以上に「日本=ゴジラ」という発想を持っているのではないでしょうか?

日本人的には、ピンとは来ませんけどね。

そういえばリブートされた映画『アメイジングスパイダーマン』の第一作目には、こんなシーンがありました。

街中に登場したリザードについて、ピーターが警察署でキャプテン・ステイシーに報告するシーン。

字幕版のやりとりはこんな感じ。

「その博士が 恐竜の着ぐるみで走り回ってると?」「着ぐるみじゃない 大トカゲに変身する」「私がゴジラの街 東京の知事に見えるかね?」「ウソじゃない 本当です」

吹き替え版だとこんな感じでした。

「その彼が暇な時間に恐竜の仮装をして走り回ってると君は言いたいのか?」「恐竜の仮装じゃありません。博士が巨大なトカゲに変わったんです」「……ゴジラが出たのは東京だと知っているのかね? どうだ?」「僕の話は本当に本当なんです」

スパイダーマンを観てたら、いきなりゴジラという単語が出てきたんで、「この世界の東京にはゴジラが出るの?」「タイアップ?」とか思っちゃった人も、いるかも知れません。

でも、原語版での実際のやりとりはこんな感じでした。

「You would have me believe that he is running around up like a dinosaur?」「Not dressing up and not dinosaur. He has transformed himself into a giant lizard.」「Let me ask you a question. Do I look like the mayor of Tokyo to you?」「I'm telling you the absolute truth.」

ゴジラという単語は特に使われてないんですよね。ただ「巨大なトカゲ」と言われたので、「私が東京の市長に見えるか?」と返している。グウェンの父ちゃんが、ゴジラを連想したっていうのが、観客にも暗黙の了解で伝わってるわけです。

でも、それだと日本の客には伝わらないから、翻訳者が「ゴジラ」という単語をわざわざ入れて補足せざるを得ない。

映画『ベイマックス』の原作コミック『ビッグヒーロー6』は、日本のヒーローチームの物語で、そのメンバの一人フレッドは、映画だと怪獣の着ぐるみが大好きな愉快な兄ちゃんって感じでしたが、原作では、ゴジラのような怪獣のオーラを身にまとって戦うヒーローです。コードネームはフレッジラ(Fredzilla)。

ビッグヒーロー6は日本、日本だから怪獣、名前もゴジラをもじってフレッジラにしちゃう。ほら、和風でしょ……みたいな発想なわけです。日本人には理解しがたいけど。

もう、日本=ゴジラは、暗黙の了解みたいなものみたいですね。

元々、ゴジラは「ゴリラ」と「クジラ」をかけあわせた造語。「クジラ」の語源は諸説あって定かではないですが、海外の人からは「ゴジラ」は日本の代名詞であり、「〜ジラ」という音は、非常に和風な響きとして聞こえるようです。

ともあれ、最近は『パシフィック・リム』にしても、『ベイマックス』にしても、今回の『GODZILLA』にしても、海外のクリエイタたちによる日本の作品へのリスペクト、ラブコールが凄まじいわけです。

先日の「スパイダーバース」でのレオパルドン登場時における、ダン・スロット氏のメッセージを見ても、単に東映版をネタにしている日本人よりも、彼は作品を知り尽くしている。

海外で上映・放映された日本の作品を観て育った世代が、作品を提供する側になってきた、ということなんでしょうけど、ちょっとこそばゆいですよね。

そんなわけで日本の特撮にも、頑張って欲しいな、なんて思ってみたり。

玩具を買ったり、子供を引き連れて映画館に行ったりとかするので、ね。

映画『GODZILLA』公式サイト