Samurai no.9『GENOSIDE THE GALAXY DRIVE』

演劇サムライナンバーナインさんの芝居は、ここ2回ほどSky Theaterの公演時期と被っていたので『サムライキラー』以来2公演ぶりの観劇となる。

しかも、今回はちえ象さんや美晴さんだけでなく、丸山さんや石川さんなど、Sky Theaterの常連俳優が数多く出演しているので、こりゃ観ない訳にはいかないとばかりに阿波踊りの喧騒渦巻く高円寺明石スタジオへいってきた次第。

物語(といっていいのかわからないが)は大戦前夜の満州

満州映画協会では、主演女優が失踪してしまったことにより新作映画の撮影が頓挫している。監督は満映理事・甘粕正彦。その背後には、関東軍参謀・石原完爾。

記憶喪失の主演男優と、失踪した主演女優の行方を追って、オカマの拝み屋・多羅尾が捜査に乗り出す。

やがて、事件は「津山三十人殺し」と関連していることがわかり……。

えーと、設定はマニアック。甘粕が撮ろうとしている映画のタイトルは「春と修羅」。ところどころに宮沢賢治の「春と修羅」の序文や「永訣の朝」の詠唱があったり。

多羅尾は、多羅尾伴内のパロディだろうか? 「あるときは」とか言ってたし……。久作先生ってのは夢野久作がモデルだと思われるけど、あくまでモデル(満映設立の頃には故人のはず)。

映画製作のバックボーンに「津山三十人殺し」があるようだが、実際は「津山三十人殺し」よりも満映設立の方が前なので、その辺りは気にしない方が良さそう。

吉見さんの脚本・演出作品は、まずあらすじありき、どんでん返し的な設定もあるのだが、それを観客席に向かって物語としてプレゼンテーションしていくという作業を完全に放棄している。むしろ、役者の口上や殺陣、見得切りをどういう風に劇的に見せていくか、に腐心しているように見える。

整合性より台詞回しの方が大事のようなのだ。

なので、最初の頃(サムライ設立当初)はなんだかな、と思って観ていたのだが、観る前から「そういう芝居だ」と思って観る分には、問題ないと気付いた。

舞台とは物語である必要はない、のだ。

常にあらゆる事象に物語を求めている僕にとっては、いささか辛いのだけれども。

演劇サムライナンバーナイン sixth drop

『GENOSIDE THE GALAXY DRIVE』

作・演出:吉見フレディ

出演:間宮知子/中根大/中村英司/中川崇秀/丸山哲司/内田彰子/笠兼三/小椋美晴/石川秀樹(フルスイング)/瀧澤千恵/岩井正宣/林晃彦/地脇慎也

劇場:高円寺明石スタジオ

2004/8/25⇒8/29