笑の大学

二人芝居として有名な『笑の大学』が映画化された。 ウミノの友人のガモウ氏も出演しているらしい、ということで、期待に胸を膨らませて、日比谷映画まで観にいってきた。 本当は11/1に観る予定だったんだけどね、シネクイントめ……。 却説。 時は昭和15年、大戦前夜の日本。 一度も心から笑ったことがないと自負する満州帰りの検閲官(役所広司)が、浅草のとある劇団の座付作家(稲垣吾郎)と出会い、別れる。 いやぁ、良かった。 舞台版は観たことがなかったので、あえて予備知識を仕入れずにいったのだが、コメディを期待して笑いに行ったはずが、見事、泣かされて帰ってくる羽目に。 創作やエンターテインメントというモノに対するアプローチが自分の中でも明確になった気がする。 堅物の検閲官が劇場の前に佇む、という舞台版にはないシーン。 そのヴェールの向こうには、今まで見たことのない世界が広がっているのではないか、という期待と不安、畏れ。 その緊張がピリピリと伝わってきた。 舞台版や、その前にあったというラジオドラマ版がどのような視点で描かれていたのかを、僕は知らない。 映画版は役所の視点から稲垣(とその向こうに垣間見える世界)を描く、というアプローチでまとめられていて、そこが良かった。 昭和15年という時代のディテールを深めることができるというのも映像版ならでは、といったところだろう(事前にいかりや長介の自伝『だめだこりゃ』などを読んでおくと、ディテールを深める良い材料になるかもしれない)。 そして、座付作家の作品に対する姿勢と情熱。 七日目の彼の懐に入っていた一通の紙。それが何なのかを悟った瞬間、涙が溢れて止まらなかった。 不意に、一昨年、モスクワの劇場が武装集団に占拠されるという事件があったとき、どうしようもない憤りを感じたことを思い出した。 それは、政治的なことに対する憤りではなく、また人命をネゴシエートの材料にしようとする武装集団への怒りでもなくて(それはそれで、憤りがあったけれど別の話)、劇場という空間を標的に選んだことに対する憤りだった。 やっぱり、創作とかエンターテインメントっていうのは、自分の中で不可侵なモノなんだなぁ、なんて思った次第。 だからこそ、稲垣の境遇とその健気さに涙が出たのかも知れない。 出演者は、作品のディテールを深めるためにいろいろ出演しているが、やはり基本は二人芝居。 稲垣吾郎の演技はCX深夜の『東京SEX』に出演してた時になんとなく気に入って、以来、SMAPの中では好きな方だし、役所広司で三谷作品といえば『合い言葉は勇気』を思い出す。 舞台版のキャストとは、全然、方向性が違うように見えるが、このキャスティングだったからこそ見えてくるものがあったように思える。 正直、作中作である『寛一とお宮』がどのくらいの作品に仕上がったのかは窺い知れない。 ただ、昭和初期の喜劇の黄金時代への憧憬を強く焼き付け、一人の劇作家がスクリーンの奥へ消えていってしまった……ということに、僕の胸は強く打たれたのだった。 『笑の大学』(2004) 原作・脚本:三谷幸喜 監督:星護 プロデューサ:重岡由美子/市川南/稲田秀樹 音楽:本間勇輔 出演:役所広司稲垣吾郎小松政夫/高橋昌也/吉田朝陰山泰/蒲生純一/つじしんめい/伊勢志摩/小松令門/坪内悟/長江英和石井トミコ/ダン・ケニー/ルカ・チュフォレッティ/河野安郎/小橋めぐみ眞島秀和木村多江
笑の大学公式サイト 参照 祝・大ヒットです!笑の大学 - お知らせ) 笑の大学(@やまとBOX) 笑の大学 ★★★★☆(★映画館アルバイター風呂敷研究中★) ★「笑の大学」観て来ました★(★★かずくんままのマネー日記+α★★) 笑の大学(あなたの想い出には何が残りましたか?) 笑の大学((売れないシナリオライター)KAZZの呟き!)