THE LAST SAMURAI

端から見て初めてわかることがある。
一次史料が必ずしも最良の史料ではない、ということが示しているように、距離をおいて抽出されるものがあるのだ。
しかし、当事者でないものが表現したものだとディテールが甘くなることは否めない。
ならば内側からディテールを補強してあげればよいのではないか?

ラストサムライ』はそういう映画である。

こんな映画は日本人には作れない。史実にない、というそれだけの理由で。
徳川二百年余の太平と幕末の動乱を経験した世界からは、こんな風な世界観が構築できないからだ。
その一方で、この映画は日本をよく表現しているし、面白い。
近世──ともすると近世というよりも中世に近いかもしれない──と近代との軋轢を、かなりディフォルメした構図で描いている。

対立の描かれ方は『もののけ姫』に極めて近くて、あるストレンジャの贖罪という観点から、近代化し列強に並ばんとする日本と、信念を貫き士道に殉ずる侍という対比──本来なら幕末を舞台とする物語で触れるべきなんじゃないかな〜的な衝突──を西南戦争の時代に無理矢理シフトさせて描いていく。
一見無茶なようで、そこには外から見た日本が凝縮されているし、細部のディテールは、日本人自身の手でフォローしている。

茅葺き屋根の立ち並ぶ村落で、田舎侍たちが剣術の稽古をしている。耳をすませば、「笑うと負けよあっぷっぷ」などという子供たちの声が聞こえてくる。それでいて、海外の人が期待する記号(富士山とか切腹とか忍者とか)もしっかり取り込む。

結果、ありえない世界観の中から、日本が幻視できてしまう。こりゃグウの音も出ない。
日本ってこういう国だったんだねぇ。素敵だ。

……感想になってませんね。
とにかく本日は『ラストサムライ』のDVDをレンタルで観ました。まあ、面白かったです。
役者も素敵でした、小雪以外。
そういえば、うちの母上様がこないだ会ったときに「面白かったけど、ラストに渡辺謙が『perfect……』と呟くのが好きじゃない。完全じゃなくていい」と言っていました。
僕はそこまでは思いませんでしたが……。

そうそう、二ヶ国語の映画だからか、吹き替えは「ボイスオーバー」という方法で収録されてます。それはそれで面白いかも。

追記:
表現・さわやかの公演は、村上さんにメールで聞いたらいっぱいだということだったので諦めました。