薔薇十字探偵の慨然

「こりゃ放っておいたら平穏無事──っつう構図は崩れた、ってことじゃないですか。ヤバいなあ。どうします」
「殲滅」

──シビれる。こういう台詞が書けるから京極は凄いのだ。

目覚めたら茹だるような暑さ。
昨晩はやはり大事をとって寝たのだ。おかげで本調子とは行かないまでも、活動可能なくらいには回復した。
喉はまだちょっと痛いけどね。

それでも病み上がりにこの暑気はキツい。
11時〜14時の間は自室でも冷房入れてても蒸すだけでどうしようもないので、シャワを浴びて、床屋に赴きリラックス。その後、喫茶店で涼みながら読書することに。

そんなわけで珈琲を啜りながら『百器徒然袋─風』の「五徳猫〜薔薇十字探偵の慨然」を読了。
「招き猫の発祥は豪徳寺」という話は聞いたことあったけど、それ以外にもあるのね。今度、豪徳寺に行ってこようかな。
猫信仰はエジプトくらいしか聞かないし、マイナだよなぁと思っていたので、ちょっとためになったかも。

『百器徒然袋』は、普通人であるところの本島の視点から、榎木津たち例の面々を語るという趣向のシリーズ。しかも、今回は『今昔続百鬼』の狂言廻し役である「ぬ」こと沼上君まで登場したりして嬉しい限り。
関口の視点から語られる京極堂シリーズ本編よりマイルドなので、読者があの面子の中に紛れ込んで事件に巻き込まれるような錯覚を覚えることができる。
とはいっても、事件の構造は非常に簡単で、条件が出揃ってさあ動こうという段階で、榎木津や京極堂だけでなく、殆どの読者も真相に至ることができるはず。益田や沼上まで真相に気付いているのに、本島君本人が気付いてないという図式は笑えた。

薔薇十字探偵シリーズは、今後も続いて欲しいなぁ。