空間製作社『雪の華〜博徒四姉妹恋手鏡〜』
ふと思い出す四本の桜……。
『HOME COMING』というミュージカルがある。沢村金魚氏の原作を元に、加藤毅さんがプロデュース(?)し、うちの四方田直樹が脚本を書いた2003年のミュージカルだ。
もちろん今までだってミュージカルは観たことがあるが、ストレートプレイと違って「身内」が作ったミュージカルはそれまで観たことがなかったので、お手並み拝見くらいのつもりで観にいったのだが、これがどうにも面白かった。
共通するモノを失った友人同士が、とある友人の門出のために過去を巡礼する話だった。
あまり褒めるとヨモがつけあがるのでほどほどにしておくが、この作品を気に入ったのでA-CASTとB-CASTの両方を観てしまったのだった。奈良百花や世古はるか、それに黒柳じゅん子さんなどと知り合う契機になったのも、このミュージカルだ。
脚本もまあ良かったのだが、加藤さんの演出や振付も良くて、ミュージカルは全体的に面白かった。
実際、好評だったようで、ミュージカルはその年のうちに再演された。
今でも、四本の桜とリエコ、ハルオ、サチ、ツトムにもう一度会いたいと思っている。再演を望む数少ない演目のひとつだ。
却説、その加藤さんが、今度は『東京おしゃれ探偵シマヅヤマゴウGO!』1〜2話の監督をつとめたうえだかつひこ氏と組んでミュージカルをやるというので、先日、武蔵野芸能劇場まで観にいってきた次第。
事前に聞いた話では、戦中戦後を舞台にヤクザの娘たちを主人公にした和風ミュージカル、だとか。
どう料理するのだろうか、とちょっと楽しみにしていた。
今回もダブルキャストだったので、少し迷った。B-CASTの方には『HOME COMING』のA-CASTのリエコ役の方(関根喜子さん)とハルオ役の方(森山登志郎さん)が出演。ちなみに、A-CASTの方にはサチ役の方(椎名桜さん)とツトム役の加藤さんが出演……。しかも同じ役のダブルキャスト(隊を分ける?)。
迷った挙句、結局、時間の都合で初日のマチネに行うB-CASTの方を観にいくこととなった。
お話は戦中の1943年、とある都市の極道の家に生まれた四人姉妹と、その隣の家に越してきた若いインテリ系の男性を中心に展開する。まあ、言ってみれば若草物語系。
極道の家とはいっても、親分さんも他の男衆も皆、出征中。お隣さんには、極道一家であることは、なんとなく流れで秘密ということになってしまっている。
隣のシマの一家から、賭場を開かないならうちが開こうか、なんて言われてたりしてちょっとヤバ目。
ネタ的にはおいしそうなものがたくさんあったのだが、どれも消化しきれていなかったように思う。
時代っぽいところは、固有名詞の羅列にとどまっているように見えて、戦中戦後の雰囲気っぽくない気がした。
ミュージカルだからそこまで考えない方がいいのかも知れない。
でも、時間がなかったからか、ダンスや歌が少なくて「加藤ミュージカル(そういう言い方をしてもいいのだろうか?)」を楽しみにしていた僕としては少々不満だった。
歌や踊りが少なかったので、ストレートプレイとして観ざるを得なく、だから脚本や考証などに不満が出てきてしまったのかもしれない。
二幕は、一幕の最後で出征してしまった男性と、空襲でケガを負い踊れない身体になってしまった次女が再会するところで幕となる。
この幕のシーンにつながるように、次女を中心に二幕もエピソードを展開できていたなら、もっと泣けたかも知れない。
ミュージカルと任侠ものの相性自体は悪くないと思えたので、あとはどう焼き上げるか、ってところではないだろうか?
空間製作社
作・演出:うえだかつひこ
作曲:まつもとみほ/花岡宏晃
振付:加藤毅
出演
A-CAST:田中実穂/椎名桜/市川真紀子/加藤毅
B-CAST:今野直美/関根喜子/戸田由香/森山登志郎
共通CAST:白鳥真理子/城戸光晴/島崎義久/坂本雅人/大木奈菜/小峰良枝/鈴木千秋/松岡佐和子/津田タカシゲ/桜井裕介
劇場:武蔵野芸能劇場
2005/1/14⇒1/16