劇団俳協『きららの指輪たち』

Sky Theater PROJECTにちょくちょく出演している上田晴美の所属する劇団俳協のワークショップ公演。ここの公演は何度か観させてもらっているが、脚本のチョイスにあまりハズレがない。なので、安心して観ることができた。 同じマンションの別々の階、同じ間取りの部屋に引っ越してきた30代独身女性4人が繰り広げる恋愛模様を描いた作品。 全編に流れる雰囲気は、こそばゆい90年代チック。背景が、ということではなく、ドラマの構成そのものが90年代といった感じ。ホイチョイとか、トレンディという言葉がよく似合う、20世紀が舞台の「時代劇」だった。 実際、元々は98年にPARCO劇場で上演された脚本らしく、今どきの音楽といえばコムロ系、クリスマスを独りで過ごせばシングルベル、数年前はお立ち台ギャルだった、などバブル崩壊の残り香のする設定がなつかしく、今と90年代には隔たりがあるんだな、ということを再確認させてくれた(ちなみに、原作は90年発表)。 ただ、この作品を「98年頃が舞台」と割り切ってしまえば良いのに、演出家は「現代」ととらえているようなので、そのあたりの統一感のなさが気持ち悪く、観ていて混乱した。 携帯電話は最近のものを小道具として使用しているし、小ネタで最近の映画の話題が出てくるし……。 にも関わらず、咄嗟のときに携帯電話ではなく相手の部屋の電話にコールして「いない……」などという台詞が出てくるとなれば、違和感を感じずにはいられない。ポケモンだって、今は151匹ではないし、今の子はイマクニの「言えるかな?」を歌わないだろう。 90年代の話として割り切るか、現代の話として脚本をアレンジするか、そのあたりのディテールを突き詰めなかったのは演出の怠慢だと言わざるを得ない(あるいは脚本が示したディテールの細かさに演出側が気づいていなかったのかも知れないが、一観客には知る由もない)。 同じ間取りの、しかし内装の違う部屋をテンポ良く切り替えて表現するのに回り舞台を使ったのは、評価したい。でも、裏がどすんばたんとうるさかったのは気になったかな? 内容的には、皆、いい具合に身勝手で人間臭くて良かった。 ちょっと、最後、唐突に都合よく丸く治めすぎたというか、未来に希望を持たせすぎている感があったが、それでも観客の心の傷は十分に抉られたと思う。 面白かった。と思う。 劇団俳協 『きららの指輪たち』 原作:藤堂志津子 脚本:マキノノゾミ 演出:西川徹 出演:上田晴美/岡村深雪/石川順/広野綾/浅川聡/伊藤有人/清家徳浩/松本義一/喜山茂雄/山岸治雄/原真名美 劇場:TACCS1179 2005/3/18⇒3/21 劇団俳協公式サイト 《参照》 古巣(女心と秋の空) 回る回るよ舞台は回る(みそだれ日記) きららの指輪とカリブの海賊(塒のこっちがわ) あんまり寝てないのに(くるぐる日記)