THE 有頂天ホテル
またも、観てから一ヶ月弱が経過してしまった。
実はこの映画、そんなに期待をしていなかった。
って書くと語弊があるな。そんなに注目していなかった、が正しいかな。
年が明けるくらいまで、この『THE 有頂天ホテル』という映画に関する情報を何ひとつ蒐集していなかったのだ。
三谷幸喜が監督する映画、くらいの認識しかなくて、「当然、劇場には脚を運ぶと思うし、観たらきっと面白いんだろうな」というさっぱりとした認識しかなかったのだ。
で、どのタイミングで行こうか迷ったのだが、たまたま知人と会う約束があって、その約束が終わったあとに「観にいく?」という話になった次第。
結論から言えばすごく面白かった。
三谷映画というと、氏が監督していない映画版『笑の大学』(2004)が真っ先に思いついてしまうが、三谷氏が監督をしている作品でもっとも最近のものは『みんなのいえ』(2001)なんだよね。
あれはあれで面白かったけど、題材が面白かったんであって、見せ方とか技法とかで感心したりはしなかったように記憶している。
しかし今作は、内容的な意味だけでなく、見せ方とかそういった方面でも楽しませてもらったように思う。
基本的には、同じホテルで過ごしている複数の主人公たちが、互いの話をリアルタイムで進行させながら、それぞれの話が微妙にリンクしている、というもの。
最近、iアプリでサウンドノベル『街』(PSP版は4/27発売予定だって)を再プレイしているが、あれに近い。
最初は登場人物の多さに戸惑うのだが、割と人間の脳というのはよくできているもので、バラバラに起きている事象を自動的に整頓して理解してしまうものなんだな、とどーでもいいところで感心してしまった。ん、日本語あってる? まあ、いいや。
三谷作品のズルいところは、記号的なものを逆手に取ったミスディレクションをすること。
まったくもって演劇的な記号で見せてくるくせに、そんなの記号だよ、リアルじゃないよ、と落とす。
女性がフライトアテンダントの格好でホテルのロビーにいたら、普通、おかしいじゃない。
でも、それが気にならない。気にならない世界観なんだな、と観客にスルーさせる。思わせておいて、あとでひっくり返す。
そんな連続ですよ。
過去作品もそーだけどさ。
あと全体的に長回しで見せているシーンが多いみたいなんだけど、あまりに人が出入りして話が切り替わっていくので、「このシーンって実は長回しの1カットだったんだ」ということが、気にならなかった。
地味に凄い。
凄いけど気付かないのでスルー、みたいな凄さ……。
この映画で不満点をあげるとすれば、豪華キャストだっていうこと。
物凄い豪華キャスト。これだけで邦画が何本も作れそうな。
映画・ドラマ・舞台を問わず三谷作品で活躍した俳優が勢ぞろい、みたいな感じ……。
これは観ている分には非常に楽しかったのだが、逆に言えば即戦力ばかりをかき集めたという感じがして、新人発掘という面での楽しみがなかった。
新人にチャンスをあたえない映画っていうのも潔くていいけどさ。
なんか淋しいよね。
キャストのことはざーっと箇条書きに。
・ミュージカル『オケピ!』(僕が観たのは2000年版)で共演してた川平慈英と松たか子が同じフレームに映っているのが嬉しかった。
・香取慎吾の役どころが『合い言葉は勇気!』の主人公を彷彿させた。そんなこともあって役所広司が彼の都落ちに反対しているシーンが楽しかった。
・寺島進は木島さんにしか見えなかった。
・梶原善はズルい。
・同じくホテル探偵もズルい。
・篠原涼子は最近、自分の中で評価上昇中。
こんなところかな。
好きなシーンは佐藤浩市が香取慎吾を抱きしめているところ……かも?
あと、タイトルの定冠詞は「ザ」と読むべきか「ジ」と読むべきかというどうでもいいことで密かに悩んでいたんだけど、英字表記が「THE WOW-CHOTEN HOTEL」だったので、こっそり解決。
そんなどーでもいいこと悩むのは自分くらいか、なんて思ってたら、パンフレットの監督インタビュウに、のっけからそのことが書かれていたので笑いましたとさ。
『THE 有頂天ホテル』(2006)
監督と脚本:三谷幸喜
プロデューサ:重岡由美子/小川泰/市川南
音楽:本間勇輔
出演:役所広司/松たか子/佐藤浩市/香取慎吾/篠原涼子/戸田恵子/生瀬勝久/麻生久美子/YOU/オダギリジョー/角野卓造/寺島進/浅野和之/近藤芳正/川平慈英/堀内敬子/梶原善/石井正則(アリtoキリギリス)/原田美枝子/伊藤四郎/唐沢寿明/津川雅彦/西田敏行/奈良崎まどか/榎木兵衛
《参照》
ザ・wow-choten ホテル(塒のこっちがわ)