那須正幹『ズッコケ中年三人組』

今更だが、先日購入した『ズッコケ中年三人組』を読了した。

例の三人が39〜40歳になっているという設定の番外編、というか後日談というか。

小学生の頃にいろいろあった彼らも、中学にあがって以降、大した事件に巻き込まれていないようだったので、煙管のような人生だな、と思うも、ちょっと『IT』を連想。

ズッコケ三人組』を最後に読んだのはいつだったろう。

最初に読んだのは多分、『ズッコケ時間漂流記』だ。

当時、中一だったと思うが、小学生の弟が借りてきたのか、買ってきたのか……。

ふと目に止まって、読んだのを覚えている。

面白かった。

今思えば自分の中で、平賀源内と田沼意次のイメージは、この『ズッコケ時間漂流記』で固定されてしまった気がする。

その後、何作か読んだような気はするが、さて何を読んだのか?

『ズッコケ山賊修行中』は面白かったような……。

2004年までズッコケが続刊していて50冊目でフィナーレを迎えた、ということ自体、知らなかったので、僕自身も20年くらいのインターバルを置いての「再会」と相成ったわけだ。

はっきり言って、ハチベエとモーちゃんの「現状」(未来?)にあまり興味はない。

なるべくしてなったという感じだ。他の未来の可能性を描いたとしても、彼らの将来にそれほどブレはないように思う。

だが、ハカセは違う。彼の人生は、ちょっとした干渉で大きく変わる。

「この作品はハカセのための作品だった」と言ってしまっても過言でない理由に、ハカセの人生ののりしろ(若しくは、振り幅?)が想像できるという点があげられる。

作品内での彼は、史学の修士課程を修了している。

大学に残るか、どこかの学芸員になりたかったが生憎、口がなく、一年の就職浪人の後、たまたま空きがあった故郷の中学に教員として滑り込み、そのまま惰性で十数年……という設定。

しかも、ご丁寧に学級崩壊の危機に晒されている。

ハカセが博士ではなく修士だってところも笑えるが、史学専攻ってところが好ましい。

博学の資格を持っているのはわかるが、教員免許まで律儀に取っているところは、なんとなく彼のイメージではない気もする。

教員として滑り込めたのはラッキィだったといえるが、果たして教員になるべきだったのか?

史学科に籍を置いていた身としては、ハカセの現状は、リアルに落とし込んでいるようで、ちょっと非現実的に見えなくもない。

博士課程も修めて、オーバドクタとしてバイト生活、とかの方がそれっぽい気もする。

研究者でありたい人間が、人に通史を教える身でやっていくのは辛いだろう(Survive『セパレイトブルー』メーカー通販特典スペシャルCD-ROM収録「昨日の夢と明日の予感」参照)。そのうちドロップアウトするのが道理かとも思う。

加えて、40歳にして独身のハカセ(他の二人は既婚)にロマンスの予感なんかもあったりして、今後のハカセから目が離せない(……いや、別に続編の予定はないんだけど)。

あちこち感想を見て回ったところ、この『ズッコケ中年三人組』と対比される作品として『ズッコケ三人組の未来報告』があげられていた。

そちらも読んでみたいと思う。

『ズッコケ中年三人組』(ポプラ社

作:那須正幹

ISBN4-591-09087-6

それいけ! ズッコケ三人組ホームページ