〜恋せよ乙女〜

巴里在住の大神一郎さんは、巴里にやって来る以前の記憶がありません。
聞くところによると、日本での仕事でそれなりの実績をおさめたため、巴里へ出向になったということなのですが、まったく思い出せないのです。
それでも彼は、巴里で得た仲間たちとともに、一世一代の大仕事をやってのけるのです。
さらに、彼はその大仕事のなかで、北大路花火というかけがえのないパートナーを得ます。
しかし、彼女との幸せも束の間、日本の帝都から彼に帰還命令が下ります。
愛する女性を置いて、日本へ帰る大神。
帰路における彼の心中は察するに余りあります。

さて、日本に戻り本来の業務にもどった彼ですが、ちょっと困ったことになります。
どうやら記憶を無くす前の彼は相当のプレイボーイだったらしく、同じ職場の様々な見知らぬ女性たちが彼を懸想した瞳で見つめてくるのです。中には自分の部屋にまで侵入してくる者までいる始末。
人見知りの激しい彼は、同種のニオイがするマリア・タチバナ、レニ・ミルヒシュトラーセにほんのちょっとだけ心を開きますが、毎夜、自室のベッドの上でガクガクブルブル震えながら眠れぬ夜を過ごすのです。
「巴里のみんなは元気かなぁ」
「ああ、巴里に帰りたいよ……」
……などと思いながら。

そんなわけなので、花火が現れた瞬間は本当に嬉しかった。
ああ、巴里華撃団が帝都に来てくれて本当に良かった。