仮面ライダーファイズ正伝─異形の花々─

2003年1月から2004年1月に放映された『仮面ライダー555』の脚本家である井上敏樹氏が自ら手がけたノベライゼーション。 文字数はそう多くないが、TVシリーズの構成を複雑にしていたスマートブレイン、ラッキークローバーといったファクタをオミットすることによって(ちなみに劇場版『パラダイス・ロスト』でオミットされたのは、ラッキークローバーと流星塾だった)、真理、巧、啓太郎、木場、海堂、結花という基本の6人+草加(と流星塾)の物語として成立させている。 それゆえにTV本編と設定の違う部分がいくつかあるが、逆にTVで語りきれなかった部分を補足している部分もあり、TV本編、劇場版に次ぐ3つ目の「ファイズ」の物語として楽しむことができる。 『仮面ライダー555』という物語は人間と異形のもの(オルフェノク)の対立を背景に、乾巧と木場勇治という二つのパーソナリティを描いた作品だと思うのだが、この小説版はその話の流れをヒロインである園田真理の視点で描いている。 そういう意味では、この物語は真理と巧の物語である、ともいえる。いや、あくまでも真理の物語なのであって、巧は真理の終着駅である、というだけに過ぎないのかも知れない。 巧についてはTV本編や劇場版で語り尽くされたからか、この小説版では、殆ど語られない、というのも興味深い。 ……ってことは、本編のサブテクスト、或いは導入として読むのが一番ってことなのか? まあ、いいや。個人的には楽しかった。 難点を云うなら、作者が脚本家だから仕方ないのかも知れないが、多少、シーンが小説的な描写に乏しかったり、地の文の視点が数人にまたがってしまい表現が飛んで状況が伝わりにくい部分もある、というところか。まあ、その辺りは許容範囲レベルなので、問題ないと思うけど……。 尚、この小説の巻末には『仮面ライダー555』のプロデューサである白倉伸一郎氏と草加雅人(カイザ)役の村上幸平氏が解説を書いている。 村上氏の解説は面白いので、それだけでも読む価値はあるかと。 『仮面ライダーファイズ正伝─異形の花々─』講談社井上敏樹/著 石ノ森章太郎/原作 ISBN4-06-330413
※)そうそう、村上幸平氏のサイトはポップアップ広告を禁じていると見られません。とほほ。