髑髏城の七人〜アカドクロ

まず、『髑髏城の七人』が何なのかから説明しなければならないのかな?

元々は、1990年に上演された劇団☆新感線の演目。この頃は、まだ演劇に興味をもつどころか上京すらしてなかった頃なので、よくは知らない。

1997年秋、劇団☆新感線との出会いはこの作品の再演版だった。この97年版は未だに自分の中では伝説の舞台である、と言っていい。

玉ころがしの捨之介と天魔王──

信長の死後、行き場を失った二人の影武者の対照的な生き様を描いたエンターテインメント活劇。

「現代の歌舞伎」を名乗るのに相応しい娯楽大作。

この97年版を市川染五郎が観て惚れ込んだということで、後の『阿修羅城の瞳』実現につながったというのだから凄い。

あのインパクトは今でも忘れられない……。

そして2004年、再び7年の時を経て『髑髏城の七人』が再演されることになった。

春に劇団☆新感線のいのうえ歌舞伎として古田新太主演の「アカドクロ」版、秋にInouekabuki Shochiku-mixとして市川染五郎主演の「アオドクロ」版を上演する、という触れ込みで。

春は忙しかったし、金欠だったので、せっかくの「髑髏城」の再演なのに見ることが出来ず消沈していたのだが、アオドクロの上演を控えた秋、丸の内東映でアカドクロを上映するということを知り、観にいくことになった次第。

舞台を撮影したものをビデオやテレビで観たことのある人はわかるかとは思うが、生の舞台に比べると迫力はない。

ライヴ感がスポイルされているというだけでなく、やはり映像だと視点が固定されてしまうという難点などもあり、正直、あまりオススメできる代物ではない。

しかし、映画館の大スクリーン&音響施設で観たら、どうなるのだろうか?

そういった疑問(というか興味)もあったので、このテの試みに乗ってみた、というのもある。

これっきりでポシャってしまっては、元も子もないもんね。

ちなみに、料金は映画料金ではなく2,500円。コンテンツに対して高いのか安いのか、いまいち判断に苦しむ料金設定だ。

結論から言えば、生の舞台で観た方が良い。良いに決まっている。

しかし、この手の舞台を生で見るなら5,000〜12,000円を覚悟しなければならないことや、見逃した舞台をこうやって観ることができる、という点を考えるなら、これはアリだ。

映画館を利用できるということであれば、あちこちで同時に上映することも可能なわけで、いろいろ応用が利く娯楽になる可能性は秘めているとも思う。

欠点は、映画のコマ数では正直物足りないってことと、映像ではカット割りなどを強要されてしまうので楽しみ方が一辺倒になってしまう、ということかな。

良かった点をあげるなら、音響だろうか? 舞台を撮影しているときに出たであろう笑い声や拍手が後ろから聞こえてきたときはちょっと感心した。

舞台のまんまの映像だから、普通に二幕なんだよね。映画として考えた場合、途中休憩ありっていうのがものすごく新鮮だった、ということも付記しておく。

以下は作品の感想。

『髑髏城の七人』は97年版で完成の域に到達していて、アカドクロ版ではどのうようにアレンジされているかが、僕的なチェックポイントだったわけだ。

まずは、沙霧(佐藤仁美)がやや若い印象に設定されていて(97年版は芳本美代子)、そのために捨之介との恋愛感情的な印象が小匙一杯程度に抑えられていた(捨之介の「女は嘘をつくから可愛いんじゃねーか」もなかったし)。

無界屋蘭兵衛が女性(水野美紀)という設定になったので(97年版では粟根まこと)、沙霧や極楽太夫(坂井真紀)、無界の里の女たちの印象が薄くなってしまっている(食われてまんがな)。捨之介や天魔王の言動や行動原理も微妙に意味が変わっちゃったしね。

あとは、全体的に枝葉がなくなり、シェイプされたような印象が残った……かな? 歌とかもオミットされてたし。

それと、配役ではないのだが古田新太が太ったというのは、かなり大きな違いかも知れない。

ちなみに、97年版にも出演していて、アカドクロにも出ているのは、古田新太橋本じゅん河野まさと、インディ高橋、吉田メタル、右近健一、山本カナコ、中谷さとみ、磯野慎吾、川原正嗣。

高田聖子と粟根まことは、10月に捨之介=市川染五郎、沙霧=鈴木杏という配役で行うアオドクロの方に出演する模様。

染五郎のかっこいい捨之介も観てみたいなぁ。こっちは、無界屋蘭兵衛が男(池内博之)だというから、それはそれで期待だし。え、でもそうなると粟根まことは何の役? 関八州荒武者隊に格下げ? ……それも仕方ないか。

ああ、アオドクロも観たくなってきた。無理してチケット取ろうかなぁ?

それより97年版のDVDが欲しいかも。お金ないのに……。

ともあれいい芝居なので、観てない人は何とかして観てくれると嬉しい。

アオドクロの公演でも、アカドクロの上映でも。

アカドクロ上映も10/3まで、丸の内東映でやってるし。今後、大阪・札幌・広島・新潟・北九州でも上映が決定したらしいしね。観れ!

浮世の義理を、全て流して三途の川に捨之介、とくらぁ。

『髑髏城の七人〜アカドクロ』(2004)

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:古田新太水野美紀/佐藤仁美/坂井真紀/橋本じゅん河野まさと/インディ高橋/吉田メタル/保井健/中野順一郎/鹿野哲郎/右近健一/山本カナコ/前田悟/横山一敏/武田浩二/佐治康志/長谷川聖/大林勝/竹内康博/加藤学/矢部敬三/三住敦洋/杉本恵美/中谷さとみ/保坂エマ/中坪由起子/川田希/野口かおる/成田さほ子/秋山エリサ/磯野慎吾/川原正嗣/佐藤正宏/山本亨/梶原善

映像STAFF

プロデューサ:金沢尚信/杉浦和清

監督:梶研吾

撮影監督:百束尚浩

髑髏城の七人〜アカドクロ公式サイト