浦沢直樹『PLUTO』
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を、「ガンダムのキャラクタデザイナ自らによるコミカライズ」と捕らえてしまうといろいろと齟齬が生じてしまうように思う。
それは、つまり貞本義行が『新世紀エヴァンゲリオン』のコミック版を描く、というのと同列になってしまうからだ。
ガンダムにはそれほどのめり込んではいなかったけれど、中学生の頃は『アリオン』をこよなく愛していた、そして大学生の頃は『ナムジ』や『神武』を愛読していた──
そんな僕にとって『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、『アリオン』や『ナムジ』と同じ感覚で「ガンダム」を読むことができるという素敵なツールなのである。
つまり、安彦良和が「ガンダム」というコンテンツにおいてどういう立ち位置なのかが、それほど重要ではなく、「安彦まんが」という手法こそが僕にとって大事なのであるということだ。
……と、いきなり別のまんがの話から始めてしまったが、今回紹介するのは『PLUTO』というまんがである。
これは「浦沢まんが」という手法で表現された『鉄腕アトム』と言うことができる。
つまり、愛読してきた『パイナップルARMY』や『MASTERキートン』、『MONSTER』を読むような感覚で「アトム」を読ませてくれるツールなのだ。
僕自身は、手塚治虫というまんが家をそれほど重要視していない。僕の好きな作家が手塚治虫のファンだということは結構ある(最近はそうでもないのかも)けど、だからといって僕自身が手塚をリスペクトしているわけではない。
もちろん手塚治虫のまんがの中で好きなまんがも多い。『どろろ』は大好きだし、好きか嫌いかは置いておくとしても『火の鳥』や『ザ・クレーター』などは僕の人格形成にも影響している……かもしれない。
現代において手塚治虫に対するアプローチは多々あれど、公認でここまで真っ向から自分流で描かれたものは見たことがなかったので、最初はかなり驚いた。
主人公であるゲジヒトもそうだけど、一巻のラストに出てくるアトムなんて、そりゃもう……(以下略)。
しかし、ようやく単行本が出てくれたのは嬉しいのだが、これって連載開始は約一年前だよね。一年経ってようやく単行本一冊か。
また、一年待たなければならないのか。
っていうか、いつ終わるのだろう?
また、気長な旅になりそうである。
ISBN4-09-187431-2