ZOKU

ZOKU──Zionist Organization of Karma Underground.

それは法になるべくひっかからない、しかし迷惑なことを世の中にしかけ、世を惑わす悪の……いや、悪戯の秘密結社。「ZOKU」という略称が先にあるので、名前自体は滅茶苦茶。誰もシオニストではない。

そんなZOKUの地道な活動に敢然と立ち向かうは、白い機関車を根城として、路線のあるところへならどこへでも駆けつけるTAI(科学技術禁欲研究所)の面々。

人知れず繰り広げられる正義と悪との戦い、というジャンルを現実のレベルにまで落とし込むとこうなるんじゃないかな、という雰囲気のコミックノベル。そういう意味では、高畑京一郎の『Hyper Hybrid Organization』とは対極であるといえる。

行動そのものが目的であり、そして非営利。やはり、悪の秘密結社をやるなら、こうじゃないといけないね。

できれば、悪側の行動をTAIよりももう一歩斜め上に設定して欲しかった気がするけど、充分楽しめた。

作中のイラストは山田章博だが、脳裏に浮かぶのは往年のタツノコ作画(キャラデザは天野喜孝で)。

森博嗣の作品はミステリィでないものも好きなのだが、ミステリィ作家だからか、ラスト近辺に叙述トリックを思わせるような描写があった。

正確にいうなら叙述トリックと思わせて実はそうじゃない、というトリックだ。

これは、「森博嗣なんだから最後にトリックがあるだろう」と思って読んでいる人への逆トリックなのだろうけど……別にいらなかったなぁ。

最初からミステリィだとは思って読んでなかったので。

『ZOKU』(光文社)

森博嗣

ISBN4-33-407585-1