響鬼のこと
一応、自分のスタンスも書いておいた方がいいかな、と思いキーボードに指を走らせてみた。
『仮面ライダー響鬼』第33話「装甲う刃」を見終わったあと考え込んだ。
──何かおかしい。
思えば9月最初の日曜、新検見川に泊まった日の朝に観たときからあった違和感だ。
「いつもと違わね?」
ってヤツ。
最初は、新キャラクタが出てきたせいだと思っていた。
何かの展開に必要なプロセスだと。
あと9月に入ってからずっとバタバタしていたせいで、特にネットなどでこの愛すべき特撮番組の情報を調べていなかった。
自分の中で安定株だったせいもあるのかもしれない。
ここ数年、あまりテレビを観ない生活をしている自分が、特撮としては実に10年以上ぶりにリアルタイムで観るほどの良作(すくなくともそう思っていた)だったしね。
しかし、4週も観ていればさすがに気付く。何かあったと。
とりあえず脚本が違いすぎる。どうにも『響鬼』に似つかわしくないギスギス感が残る。
ビルバインの登場もあった。
そこで漸く、東映公式のスタッフリストを見てみた。
第30話から第33話まで四週連続で、『アギト』や『ファイズ』でメインを張っていた井上敏樹氏が入っている。
テコ入れがあったんだな、と勝手に納得。
井上氏は、そのテコ入れのピンチヒッタとして4週だけ急遽スポットとして入れられたのかな、と予想して次回予告を見ると次回の予告にも「井上敏樹」の名。あれれ?
そこで、単なるテコ入れじゃないことに気付き、あちこち検索をかけて、大まかな経緯を知る。
もちろん事実の仔細まではわからない。
とりあえず、何らかの問題があって、今までプロデューサだった髙寺成紀氏が降板し、後任に白倉伸一郎氏が起用されたことは、事実のようだ。
そして、そのつてで長年コンビを組んでいた井上氏が起用されたのだろう。
『バクマツバンプー〜幕末蛮風〜』のせいでしばらく脚本に参加していなかったTEAM発砲・B・ZINのきだつよし氏の日記によれば、氏が復帰する可能性はあるようだけれど、メインで脚本を担当していた大石真司氏は降板してしまった(?)ようだ。
ともかく第33話を見終わり、プロデューサ更迭の事実を知って、激しく迷った。
今後も観続けるべきかどうか、と。
勘違いしないでほしいのだが、僕は白倉・井上コンビは大好きで、「平成ライダーで何が好きか」と問われたら「アギトとファイズ」と答えることにしている。
特に『仮面ライダー555』は大好きで劇場版(ディレクターズカット)のDVDを持っているし、TVシリーズのDVDも第1巻と第2巻も購入した。そのうち全巻揃えようかな、とも思っている。
しかし、別の意味で『仮面ライダー響鬼』は好きだった。
自然を基調とした和風な画作りや、伝奇的な要素は魅力的だった。山の中でベースキャンプを張り、地道に妖怪を退治する組織的活動というのも良かったが、何より脚本の暖かみが好きだった。
甘味処「たちばな」に本当に行ってみたい、と思わせるような脚本だったと思う。
ロケ地である「竹むら」ではなく、作中の「たちばな」に行きたい、と心底思えた。
その感覚が新体制の『響鬼』からキレイサッパリ消えてなくなっていたのだ。
新フォーム「アームド響鬼」の登場とか「アームドセイバー」による戦い方などの路線変更は仕方ないとしても、脚本の雰囲気が変わってしまったのがいただけない。
ホンから感じる配慮も消えた。
上手くは説明できないのだが、要するに僕の観たかったものではなくなってしまったのだ。
これに似た感覚を数年前に味わっている。
スーパーファミコンで『かまいたちの夜』をプレイした時に、その凄惨な内容とは裏腹に、プレイ後には作中のペンション「シュプール」の暖かみだけが心に残った。
どこかのサイトの感想ではないが、ロケ地「クヌルプ」にも行きたかったが、それより「シュプール」に行きたかった。登場人物たちに会いたかった。
いや、ゲームの中で確かに僕はシュプールに存在し、彼らに会った。そんな風に思ったものだ。
しかし、一昨々年『かまいたちの夜2〜監獄島のわらべ唄〜』が発売された時、そのファンとしての気持ちは粉砕されてしまった。
前作の内容が作中で作中作──つまりフィクションということにされてしまったのだ。そして、肝心の『2』で描かれていた人間像は非常にギスギスしたものだった。登場人物たちも、とても同一人物とは思えなかった。
担当するライタが変わるだけでキャラクタの内面がこうも変わるものなのだ、と実感することができた。
哀しい思い出だ。
5/29の自分の日記で「たちばな」を「シュプール」に喩えているのだが、まさか「たちばな」が「シュプール」の二の轍を踏むとは思わなかった。
そこに関わった魔化魍が窮奇だったってのも、悪い冗談だ。
井上氏の脚本は嫌いではない。
嫌いではないが、外連に溢れていて、『響鬼』という細やかな世界には向かないと思う。
徹底的に外連を廃した『仮面ライダークウガ』の路線から、あえて外連みを取り込んだ『仮面ライダーアギト』を作った勇気は賞賛に値するけど、同じ作品の中でやられたらたまらない。
谷口ジローが描いていた作品の続きを、何事もなかったように車田正美が描いちゃいけない。
どっちも好きだが、そういう問題ではないのだ。
できることなら第29話にもどって、本来進むべきだった話の続きが観たい。
とは言っても変わってしまった路線はもう戻らない。傀儡は「人員整理」されてしまったし、アームドセイバーもなかったことにはならない。
死んでしまった食賀優(『からぶりサービス』)は生き返らないのだ。
退っ引きならない事情もあるだろう。
だから、せめて、井上氏の参加は作品の路線変更が軌道に乗るまでのスポット的なものだと信じたい。
そして、プロデューサの降板は残念だが、せめて脚本家だけでも復帰してほしいと思う。
それがかなわないなら、せめて前半に積み上げたものを壊すことだけはしてほしくはない。
増築するより、ゼロから作り直すほうが楽なのはわかるけど……。
brand-newなら、いらないなぁ。
仮面ライダー響鬼 DX音撃棒セット(バンダイ)
おもちゃのうりあげ不信も更迭・路線変更の一因らしいので、アソシエイト置いておきますね。
⇒仮面ライダー響鬼(テレビ朝日公式)
⇒仮面ライダー響鬼(東映公式)
《参照》
釣られてみるか(A Study around Super Heroes)
たまには響鬼の話など(カメニッキ)
4都市!舞台挨拶ツアー(speak: Shigeki Hosokawa official web site)
響鬼30話(吉田戦車日記)
9/13(島本和彦の感想文2005)
映画「仮面ライダーヒビキ」のブログに、テレビ版への苦情殺到(やじうまWatch)
お詫びと訂正/『響き交わす鬼』解説中の記載について(幻妖ブックブログ)
響き交わしたようで(厨子王の逆襲〜京極夏彦のコーナー:週刊大極宮)
「響鬼」に何がおこっているのか?(漫画脚本家 田畑由秋のぼやきつぶやき)
『仮面ライダー響鬼『完全新生』路線 復活運動』
『仮面ライダー響鬼』に理想の最終回を!(たのみこむ)