丑組芝居『モンスター』
三人芝居というジャンルがある。
あると思う。いや、あると思いたい。かくあれかし!
一人芝居がジャンルとして認められるなら、三人芝居がジャンルでもいいじゃないか、という一行目の断言とは違う弱気な発言でお茶を濁しつつも、それでもやはり三人芝居はジャンルである、と記しておきたい。
──私が最初にお話するのは多分偶然で、しかし人はそれを運命と呼ぶのかもしれません。
11年ほど前の12月に、この言葉から始まる三人芝居を新宿タイニイアリスで観たのが、小劇場に関わりを持ち始める契機の一つだったことを、ふと思い出す。
その後、タイニイアリス自体は移転してしまったが、タイニイアリスのあった場所は、パンプルムスとして再生。そのパンプルムスで今回の三人芝居が上演された。
その時、一緒に観にいった四方田直樹の脚本で。
この『モンスター』は大槻ケンヂ作の短編小説『憑かれたな』(角川文庫『くるぐる使い』に収録)を原作とした三人芝居だ。
ある日突然、「憑依現象」の症状が出てしまった婚約者の女をなんとかするために男が呼んだのは、オール・ジャンル・エクソシストと名乗る男だった──。
登場するのは結婚を控えた男と女、そしてオール・ジャンル・エクソシストを名乗る男の三人。
個人的に理想としている三人芝居の基本、男二人に女一人、を満たしている──実は、男二人のうちの一人(ないしは両方)がゲイだと嬉しいのだが、さすがにそこまでは(笑)──。
って、さっきから何の話をしているのかというと、通じている人には通じていると思うので、いちいち列挙するのも無粋だが、鴻上尚史の『トランス』、中谷まゆみの『ビューティフル・サンデイ』などを思い描いているわけだ。
ちなみに戯曲ではないが、江國香織の『きらきらひかる』もゲイのカップルと一人の女が織り成す物語で嫌いではない。
だから、三人芝居はジャンルだ、と言いたくなる気持ちもちょっとわかってもらえると嬉しい、と思う。
閑話休題。
原作つきの物語、ということで、どこをどこまで語れば原作の評価になって、どこから語ると今回の公演の内容の評価になるのかという線引きが曖昧になってしまうと思う。
だから、原作未読の身としては、原作も含めて込み込みの感想になってしまうとは思うが、赦して欲しい。
内容的にはオーソドックス。
長年、脚本家と共に行動してきた身としては、原作を活かしつつも脚本家の色は十分に出ていたのではないか、と感じた。
自分の色を出しつつ、原作を殺さない、というのは大事だと思うので、この手の技量は今後とも上げていってもらいたい。
ただ、ラストに関しては、原作に対する感想になってしまうのかも知れないが、期待を裏切って欲しかったように思う。
あるいは、もう一転するとか。
役者・演技に関しては熱演が伝わってきたので、良かったんじゃないかと思う。
蒲生氏の演技指導のシーンや、過去を語るシーンなどでは特にのめりこんで観られたし。
ただ、憑依症状が出ている女性の憑依っぷりの一辺倒さとか、そういう知らないものに対して想像力で補う部分は、もうちょっとなんとかなったかもなぁ、とは思った。
あれでも十分、大変そうだったので、それ以上を求めるというのは無茶なのかも知れないけど、一応、忌憚なく、そう感じたと記しておこう……。
あとは、ゲーム製作者的な言い方をさせてもらうなら、「たとえ仕様通りであったとしても、客にバグと思わせない」という労わりとか思いやりみたいなものに相当する部分の工夫が、場内全体にあったらな、とは感じたかな。
ともあれ、クリスマスイヴの夜に、感慨深い「三人芝居」の舞台を感慨深い場所で観させてもらったので、個人的には満足して劇場を後にした。
2006年ももう終わりだなぁ……。
丑組芝居
『モンスター』
原作:大槻ケンヂ
脚本:四方田直樹(Sky Theater PROJECT)
演出:蒲生純一
出演:豊田麻里/乙黒史誠(Z団)/蒲生純一
劇場:新宿パンプルムス
2005/12/23⇒12/25
⇒丑組芝居公式サイト
角川文庫『くるぐる使い』(角川書店)
作:大槻ケンヂ
《参照》
12/26(月)不定期日記(オーケンの不定期日記ver.3)
ブースでブー(塒のこっちがわ)
久々の新宿(kennさんdiary)
クリスマスイヴというけれど(PHOTOSHIP)
モンスター(ミハルのぷるるんパラダイス!)
モンスター(マッドサイエンスアカデミー造形工場)
サンタが、来たよ!?("とりあえず週刊"しばい屋あっちゃん通信)
オーケンが原作のお芝居を見てきました。(咄嗟の判断でオリーブオイルをよける)